流す前にふとトイレを見てみると……、

「あれっ、血!?」


血が混じった尿を血尿といいますが、これは体に異常がある証拠です。血尿といえば「膀胱炎かな?」と思ってしまうかもしれませんが、原因はそれだけではないようです。今回は、血尿を引き起こす病気について解説します。

記事監修



松田明子 先生


内科/腎臓内科/泌尿器科

内科認定医、透析専門医、腎臓専門医、臨床腎移植認定医。東京女子医大泌尿器科所属。女医+(じょいぷらす)所属。

■血尿の種類とは?

「血尿」と一口にいいますが、血が混ざる程度もいろいろで、またその色も赤~黒っぽいまでさまざまです。一目見て「血尿だ!」と分かる場合もありますが、顕微鏡で見ないと分からない、といったこともあるのです。


『日本腎臓学会』の「血尿診断ガイドライン」によれば、

血尿とは尿に赤血球が混入した状態であり、腎・泌尿器系疾患の診断・治療のための重要な症候である。

と定義されています。


また同ガイドラインによれば、「尿試験紙法」においては「(1+) (ヘモグロビン0.06mg/dL)以上を陽性」として「血尿」と判定。また「尿沈渣検査法」において、「一般的に顕微鏡による尿沈渣検査によって行われ、およそ5個/HPF(400倍強拡大1視野)以上を血尿とする」。また「無遠心尿でのフローサイトメトリー法(FCM法)などがあり、この場合はおよそ20個/μL以上を血尿とする」となっています。


要は、ある程度の赤血球が尿に混ざらないと尿は赤くなりませんが、一見正常な尿でも微量(上記基準を満たす程度)な赤血球の混入があれば血尿になるということです。

⇒データ引用元:『一般社団法人 日本腎臓学会』「血尿診断ガイドライン」

https://cdn.jsn.or.jp/jsn_new/iryou/free/kousei/pdf/JJN7-50_12209.pdf

■血尿が出る原因とは?

血尿が見られた場合、どんな原因が考えられるでしょうか? 主なものを挙げてみましょう。


  • 尿路結石

「尿路」とは腎臓からぼうこうまでの尿の通り道のことです。尿路のどこかに結石ができることがあり、これが尿路結石という病気です。結石は尿の速やかな排出を妨げますし、激しい痛みを生じます(痛みは現れたり消えたりします)。


※腎臓や尿管に生じる結石を「上部尿路結石」、ぼうこうや尿道に生じる結石を「下部尿路結石」といいます。


  • ぼうこう炎

尿路感染症のひとつです。細菌などによって尿路が炎症を起こし、血尿が出ることがあります。頻尿(何度もトイレに行く)、残尿感などの症状があればぼうこう炎の可能性が高くなります。免疫力が落ちたときには「急性ぼうこう炎」にかかりやすくなります。たとえば、ストレス、過度の疲労、病気などのときは免疫力が落ちるので要注意です。

  • 腫瘍が原因となるもの

・腎細胞がん

腎臓は血液をろ過して尿をつくる働きをする臓器です(ほかに血圧の管理なども仕事です)。腎臓にできるがんは、腎実質にできる「腎細胞がん」と、腎盂(じんう)にできる「腎盂がん(腎盂・尿管がん:後述)」に分けられますが、腎細胞がんでは症状が見られないことがほとんどで、そのため見過ごされがちです。検査で偶然見つかるというケースも少なくありません。しかし腫瘍が大きくなると血尿が出ることもあり、それで気付く場合もあります。


・ぼうこう腫瘍・ぼうこうがん

ぼうこうは尿をためておく役割をします。ぼうこうにできる腫瘍がぼうこう腫瘍ですが、ぼうこう腫瘍は良性のものが少なく、ほとんどが「ぼうこうがん」です。ぼうこうがんの初期症状では血尿が多く見られます。ただし、顕微鏡で確認できるほどの血尿の場合もあります。腫瘍が大きくなると、排尿困難、頻尿などが表れ、さらにひどくなると場所によっては尿路を塞ぎ、腎機能不全なども引き起こしますので、早期発見・対処が望まれます。


・腎盂・尿管腫瘍/腎盂・尿管がん

腎臓は、尿をつくる「腎実質」と、尿が集まる「腎盂」からできています。尿管は腎臓とぼうこうの間にある、尿が通る左右一対の管です。腎盂と尿管は「上部尿路」と呼ばれますが、ここにできる腫瘍。またがんは「腎盂・尿管腫瘍」「腎盂・尿管がん」とひとくくりに呼ばれます。この腫瘍、がんによっても血尿が出ます。また、尿管が血液がん自身によって閉塞すると尿路結石と同じような激しい痛みが生じます(現れたり消えたりします)。排尿痛、頻尿が起こることもあります。また、ひどくなると水腎症や無機能腎(患側のみの腎機能障害)に繋がります。


・尿道腫瘍

ぼうこうから排出されるまでの尿の通り道が「尿道」です。ここにできる腫瘍が尿道腫瘍です。尿道腫瘍でもやはり血尿が表れることがあります。排尿困難、夜間頻尿なども同時に見られることが多いです。


・前立腺がん

前立腺は男性にのみありますので男性しかかかりません。しかし前立腺がんが増加傾向にあるため要注意な病気です。血尿も見られますが、尿が出にくい、夜間頻尿など、尿のトラブルが多々あることが特徴です。


  • 特発性腎出血

何らかの原因で腎臓の血管が破れて出血し、それが尿路に流入して血尿が出ます。検査しても原因がよく分からないことがあります。


  • 腎盂腎炎(じんうじんえん)

腎盂に細菌が入って炎症を起こす病気です。男女で比較すると、女性の罹患(りかん)率が圧倒的に高いので、女性は注意が必要です。


ほかにも、血尿が出る病気としては、慢性腎炎のなかでも血尿を主症状とする疾患(IgA腎症、急性腎炎症候群など)や結核菌が腎臓に達し尿路に感染を広げて起こる「尿路結核」などがあります。


  • 腎臓が外傷を受けた場合

事故などで腎臓が外傷を受けた場合には、出血によって尿に血が混ざる場合があります。


  • 血尿と鑑別が必要な疾患

・激しいスポーツが原因による溶血性のもの

踏み込む動作の多いスポーツを行っている人で見られます。酸素を運ぶ赤血球は薄い膜で覆われているのですが、足を踏み込む動作が激しいと、足の裏が地面に当たる衝撃で赤血球が破壊され、中のヘモグロビンなどが血流中に流れ出す「溶血」が起こります。こうして赤血球の外にでたヘモグロビンが尿に混入することにより試験紙法で陽性となることがあります。しかし、赤血球自体は尿に出ていないため沈渣を見ることにより鑑別でき、ヘモグロビン尿であると診断できます。


マラソン、バスケットボール、剣道などで見受けられる現象ですが、が特に剣道は、シューズを履かずに素足を板間に打ち付けますので溶血現象を起こしやすいと言われています。


筆者は高校時代、剣道部でしたが実際にヘモグロビン尿を経験したことがあります。先輩から聞いてはいたものの、激しい稽古の後自分で経験したときは仰天したものです。もしあらかじめ聞いていなかったら、すぐにお医者さんのところに駆け込んでいたでしょう。



ともあれ、目で見てすぐ分かる血尿が出たら、泌尿器科の専門医を受診するようにしましょう。原因によっては放置すると重篤な事態になる場合があります。尿に血が混じるなんて尋常なことではありませんからね!


(高橋モータース@dcp)