鼻水が止まらない、鼻づまりが苦しい、ムズムズがひどい……。花粉症の人にとって鼻の悩みはつきませんが、対策として、専用の洗浄液を鼻に通す「鼻うがい」が話題になっています。市販品のイメージ画像では、鼻から水が流れ落ちていてなにやらぎょっとする方法に見えますが、耳鼻咽喉科専門医で、とおやま耳鼻咽喉科(大阪市都島区)の遠山祐司院長は、「鼻うがいは耳鼻科の治療法のひとつでもあり、有用です」と話します。そこで、詳しいお話を聞きました。

取材協力・監修

遠山祐司氏。

耳鼻咽喉科・気管食道科専門医。大阪市都島区医師会会長。医学博士。医療法人とおやま耳鼻咽喉科院長。


医療法人とおやま耳鼻咽喉科 大阪市都島区御幸町1-9-1

http://www.eonet.ne.jp/~tohyamajibika/

■鼻の中の花粉、ホコリ、ウイルスを洗い流す

――「鼻うがい」とは、具体的にどうするのでしょうか。


遠山医師 一方の鼻の穴に専用の洗浄液や生理食塩水を入れて、鼻か口からはき出す方法です。鼻炎の原因となる、鼻の中に付着した花粉やホコリ、ウイルス、雑菌などを取り除きます。「鼻洗浄」とも呼び、鼻をかんでも取りきれないものを洗い流す目的で使用します。


――鼻うがいは、花粉症や風邪の鼻炎対策になるのでしょうか。


遠山医師 なります。鼻うがいは、花粉症などのアレルギー性鼻炎や風邪症候群での鼻炎、また慢性副鼻腔(ふくびくう)炎(ちくのう症)で鼻水や鼻づまりがつらい患者さんに、以前から耳鼻科で行われている治療法のひとつです。鼻水や付着物を洗い流して、鼻粘膜の機能を回復させます。


鼻水をためたまま放置すると、細菌やウイルスに感染して炎症が起こり、副鼻腔炎や、長引いて慢性副鼻腔炎を発症することがあります。鼻うがいはこれらの予防にもつながります。


――鼻うがい用の市販品が話題になっていますが、自分で手軽にすることはできますか。


遠山医師 できます。鼻うがい用の器具と洗浄液がセットの市販品を使えば、すぐに始められるでしょう。ボトルタイプ、注射器タイプ、スプレータイプなど、いろいろな種類の器具があります。また、使用後に爽快感が広がる香りのあるものや、微量の殺菌成分を加えた洗浄液もあります。


ただし、それらを買わなくても、自宅にある容器と水と食塩で行うこともできます。


――その方法をこのあとご紹介いただくとして、まず、鼻に液体が入るとツーンと痛くなりませんか。不快感はないのでしょうか。


遠山医師 お風呂やプールで鼻に水が入ったときに痛みを感じるのは、ヒトの体液と水の浸透圧が違うからです。鼻うがいを真水ですると激しく痛みますが、体液の浸透圧と同じ、0.9%の生理食塩水や市販の洗浄液で行うと、刺激や痛みはあまりありません。

■初心者は鼻から出し、慣れてきたら口から出す

鼻うがいが有用だと分かったところで、実際に「鼻うがいを自分で行う方法」を遠山医師に教えてもらいましょう。


<準備するもの>


・精製水1リットルに対して9グラム(小さじ2弱)、2リットルであれば18グラム(大さじ1強)の食塩を溶かして、0.9パーセントの生理食塩水を準備します。体温に近い36~37度のぬるま湯を使うと刺激や痛みが少なく、行いやすいでしょう。水道水の場合は雑菌がいるので、一度沸騰させて冷ましてから使用しましょう。


ただし、1回の鼻うがいで使用する量は、左右の鼻で20~30ミリリットルにしましょう。1セット5回するとしても、100ミリリットル(コップ7分目)ほどあれば十分です。


・洗面器など、受ける容器。


・使用時には液がこぼれるので、ティッシュペーパーやタオルなど。


・洗面所や浴室で行いましょう。


<初心者は 鼻から入れて、鼻から出す>


(1)市販の専用のボトルがあればベストですが、細いノズルがついたドレッシング用容器でも代用できます。


また、ペットボトルも使えます。小さいタイプを用意し、上記で準備した生理食塩水を適量(回数によります)入れて、ふたをします。ふたに先のとがったドライバーなどで直径3~4ミリぐらいの穴をあけます。


(2)口と鼻から息を吐いてから、一方の鼻の穴を指で押さえ、前かがみになりながらやや上を向き、もう一方の鼻の穴に、(1)の開けた穴から生理食塩水を少しずつ、10~15ミリリットル(大さじ1杯弱)を流し入れます。『エー』と声を長く出しながらすると、入れやすいでしょう。


このとき、液を飲み込まないように注意してください。唾(つば)や食塩水を飲み込むと、耳に液が流れて中耳炎になることがあります。


(3)顔を下に向けて、鼻から息を吐くように洗浄した液を鼻の穴から出します。軽く鼻をかんでもよいでしょう。強くかむと耳に水が流れるので注意してください。


(4)もう一方の鼻も同様に行います。これを2~5回繰り返します。


<慣れてきたら 鼻から入れて、口から出す>


(5)(2)で注ぎ入れた液を、少しだけ上を向いてのどの方へ落とし、次に下を向いて口から吐き出します。


(6)もう一方の鼻も同様に行います。これを2~5回繰り返します。


<洗面器を使用する方法>


(7)準備した生理食塩水を、洗面器に5~7分目あたりまで入れます。


(8)(7)に顔を近づけ、一方の鼻の穴を指で押さえて、もう一方の鼻の穴から生理食塩水を吸い込み、洗面器から顔をはずします。


(9)(8)で吸い込んだ生理食塩水を、鼻の穴や口から洗面台などにはき出します。口に流れてむせこまないように息を止めておきましょう。もし、口に流れたらはき出します。


(10)もう一方の鼻も同様に行います。これを2~5回繰り返します。


――1日に何回ぐらい、いつどのようなタイミングで行うのが効果的でしょうか。


遠山医師 上記の方法を1セットとして、1日に1~2セットまでにしましょう。「花粉症や風邪の予防には毎日必要なとき」に、「鼻水や鼻づまりを改善したい場合は、鼻水が多くても完全には鼻がつまっていないとき」に行うとよいでしょう。


――「鼻をかむよりすっきりする」と、同僚がいまはまっていますが、それ以上の回数をするのはよくないのでしょうか。


遠山医師 過剰に行うと、鼻粘膜の繊毛運動や機能を損なうことがあるので、回数を守ってください。


また、鼻づまりがひどいと感じるとき、のどに炎症があるときは耳を傷めたり、のどの痛みが増したりすることがあるので、行わないでください。繰り返しますが、水を使うと痛むので、くれぐれも、「0.9%の生理食塩水を体温程度に温めて使う」ことがポイントです。


手順が分からない、うまくできない、飲み込んでしまうなどの場合は、耳鼻科で相談してください。


――ありがとうございました。


鼻に水を入れるのは勇気がいりますが、鼻うがいが耳鼻科での治療法でもあると聞いて安心しました。実践してみると痛みはなく、鼻のとおりがよくなってすっきりしたように感じます。鼻水、鼻づまりで苦しいときのセルフケアのひとつとして参考になさってください。



(取材・文 海野愛子/ユンブル)