「今日はどうしても仕事に行く元気がでない…」誰しも一度はそんな気分になったことがあるはず。しかし、陰鬱(いんうつ)な気分があまりにも強すぎて、無断欠勤や遅刻を繰り返してしまう場合は、「適応障害」を疑うべきかもしれません。


「適応障害」とは、いったいどのようなもので、原因はなんなのでしょうか。よく聞く「うつ病」との違いや治療法を解説します。

■適応障害とは

適応障害とは、そもそもアメリカの精神医学の世界で“adjustment disorder”と呼ばれていた疾患の日本語訳で、ICD-10(世界保健機構の診断ガイドライン)では「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」と定義されます。日々の生活におけるストレスの要因は、仕事関係での出来事から恋愛関係での出来事まで様々ですが、適応障害とはそうしたストレスが本人にとって耐えきれないほど重いために、通常の社会生活が送れない状態になることと言えるでしょう。


こと「ブラック企業」などが頻繁に取り上げられる日本の労働環境においては、この適応障害の患者が急増していると言われています。

■適応障害の診断基準

適応障害の診断基準については、医師や病院すべてに共通する明確な診断基準があるわけではありません。先にも述べたような無断欠勤や遅刻を繰り返すケースや、不安やパニック発作を起こすケースや、動悸や頭痛などの身体的症状がみられるケースもあります。しかし、大部分で共通する認識としては、

  • 1.ストレス因となる環境などを改善することで症状の回復が見られる場合は適応障害である可能性が高い。

  • 2.統合失調症やうつ病、不安障害などの診断基準の方がより症状と合致している場合は、そちらの方が優先されて診断名となる。

などの点が挙げられます。

■うつ病との違い

うつ病という言葉はあなたもよく耳にすることでしょう。そのため、うつ病と適応障害は何が違うのか、という疑問をお持ちになるかもしれません。


うつ病と適応障害の最大の違いは、ストレス因となる事柄が取り除かれた後でも、症状が持続しているか、にあります。適応障害の場合、多くはストレス因がなくなると症状は改善傾向に向かいますが、うつ病においてはその要因と思しき事柄を取り去っても症状が持続する場合や、なかには要因がはっきりしない場合もあります。


また、適応障害と診断されてから数年後には病名がうつ病に変更される患者さんも多く、適応障害はうつ病などのより重篤な精神疾患の前の段階である可能性がある、という側面も持ち合わせています。

■適応障害の治療

適応障害の治療において最優先されることは、その要因となる事柄の改善です。たとえば職場がストレス因となっている可能性が高い場合は、部署を変えるなどのような手段を講じることです。現実的に可能なのであれば、最も治療効果が見込まれる手段であるといえるでしょう。


このほか、カウンセリングなどを通してストレス因への考え方(認知)を変えていくことで環境に適応することを目指す認知行動療法というものがあります。ストレス耐性を強めるようなトレーニングにつながる方法といえるでしょう。


さらに、適応障害に対してはときに薬物療法がおこなわれることもありますが、これはストレス因を根本から変えるような手段ではないため、薬物のみに頼る治療は避けられるべきものです。



最近やる気が起きない、つらいなどの気持ちがあまりに強くて社会生活が送れないほどであり、その原因と思しき事柄に心当たりがある場合、あなたは適応障害になっているのかもしれません。とくに職場環境が原因となっている場合には、心療内科や精神科の医師が職場環境の改善を求めるよう依頼してくれるケースも多々あります。うつ病などの本格的に重い病気になる前に、まずはお近くの病院へ行ってみてはいかがですか?

参考資料

原田誠一 編 適応障害 日本評論社 2011

厚生労働省 みんなのメンタルヘルス(2017.8.7閲覧)

http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_adjustment.html

(執筆・監修 ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション株式会社)