大事な会議や彼とのデート。いざというときに限って、やたら「ゲップ」が出るという経験はありませんか? 満腹でも炭酸飲料を飲んだわけでもないのに、いったい何で……? 今回は、ゲップの原因と対策について、心療内科・形成外科の専門医で歯科医でもある小野繁先生にお話を伺ってきました。

取材協力・監修



小野 繁 先生


医学博士、形成外科専門医、心身医学専門医、心療内科専門医。

東京医科歯科大学歯学部卒、札幌医科大学医学部卒。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授(心身医学)、同歯学部附属病院客員臨床教授などを歴任。

主な著書は、『人の体はどこまで再生できるか』(講談社)、『キズをきれいに治す』(講談社)、『「病院の検査がわかる本」(学研)、『ドクターショッピング―なぜ次々と医者をかえるのか』(新潮新書)など多数。現在は、横浜市の竹山病院に非常勤医師として勤務。

http://www.med-keiseikai.or.jp/take/

■ゲップが出るメカニズムとは?

――ゲップは満腹時や炭酸飲料を飲んだときによく出るイメージですが、そもそもどういうメカニズムで起こるものなのでしょうか?


小野先生

ゲップは、胃や食道に空気がたまると起こる生理現象です。誰しも、唾を飲みこんだり、食事をしたりするときに空気も一緒に飲みこんでいるのです。「空気を飲む」というのは、呼吸で「空気を吸う」こととは異なります。呼吸では、空気を吸うと気道を通って肺にいきます。しかし、口から空気を飲みこむと食道を通って胃に入ってしまうのです。これが一定量たまると、食道を通って口からゲップとして出てくるのです。さらに胃から大腸にまで行けばオナラとなって排出されます。


――それではゲップが多い人は、空気をたくさん飲みこんでしまっているということなんですね。


小野先生

そうですね。空気をたくさん飲みこんでしまうことを「空気嚥下症(くうきえんげしょう)・呑気症(どんきしょう)」と言います。ゲップが増えるだけでなく、オナラもよく出ます。また、胃酸が逆流することもあり、逆流性食道炎の原因にもなり、胸焼けや胃もたれなどの症状も見られる場合があります。

■空気を飲みこみやすい原因は唾液飲みと食事の仕方にあった!

――食事の際に空気を飲むというお話がありましたが、特に空気を飲みこんでしまいがちな食べ物などはあるのでしょうか?


小野先生

食べ物自体は特に関係ないと思います。炭酸飲料はガスが入っているので、胃の中の空気が食道を上がってきやすくはなりますけどね。どちらかと言えば、食事のときの姿勢がポイントです。おしゃべりをしながら、テレビを見ながらの食事は空気を飲みこみやすいんです。意識がない人に人工呼吸をするときによく「気道を確保する」と言いますよね。顎先を持ち上げて、空気の通り道を作ることなのですが、この状態で飲みこみ動作をすると、空気を飲む量が多くなります。人と会話したり、テレビを見たりするときは顔を上げた状態なので、顎が少し上がります。この状態は中咽頭(鼻の奥から食道までの部分)の空気量が多くなるので、空気嚥下を起こしやすい姿勢なのです。ワイワイ盛り上がった飲み会の翌日にゲップが多いのもそういうことです。


――確かに身に覚えがあります……! 食事のときはどのような姿勢を取るのがいいのでしょうか?


小野先生

うつむき続ける必要はないですが、飲みこむときには顎を引くといいと思います。テーブルの食事に目を配るように心がけ、食べ物を飲みこんでから会話をするなど、食事中の顎の位置に気をつけることでしょう。


――ほかに、空気を飲みこみやすい状況はどんなものがありますか?


小野先生

ストレスや緊張を感じている状態だと、唾液を飲みこみやすいのですが、唾液と同時に3〜5ミリリットルほどの空気も一緒に飲んでいます。心身ともに緊張している状態では歯を噛み締める回数も増えるので、「固唾を呑む」という表現があるように、嚥下動作が起こりやすく、唾液を飲みこむ回数が多くなります。

■ゲップは我慢できない!?

――ストレス社会を生きる現代社会人にとっては深刻なお話ですね……。ちなみに、会議中やデートなどゲップをしたくないシーンで、一時的にゲップを我慢する裏技はないのでしょうか?


小野先生

胃に溜まりすぎた空気は、意思でコントロールできないので、難しいですね。ガスコンという胃の空気の消泡剤で出すことはできますが、空気量が多いとキリがないので焼け石に水状態です。まずは空気を飲まないようにすること。飲んだ空気の処理をする結果治療ではなく、飲み込まないようにする原因治療をすることが重要です。


――なるほど。まとめると、空気呑気症を克服するためには食事時の姿勢の改善、ストレス環境にあるときの唾液飲みこみに注意すること、すなわち根本的に空気を飲む回数を減らすのが第一なのですね。


小野先生

あまりにも空気嚥下を気にしすぎると、飲みこみ動作が誘発され、余計にゲップが増えてしまいます。空気を飲むことは誰しもが経験していることなので、気にし過ぎないのが一番ですよ。


無意識に行ってしまう噛み合わせをしないようにするには、マウスピース療法や、ストレス緩和の医療カウンセリングなど、その人に合った原因治療が必要になります。いくつか挙げた対処法を試みても全く変化がみられないほど頻発するゲップは、唾液飲みや食事姿勢で起こる症状ではない可能性もあるので、内科や胃腸科などを受診することが必要なこともあります。



口から飲みこんだ空気がゲップやオナラの原因だったとは、意外にも知らなかったですよね。姿勢などの生活習慣は意識的に改善できるので、できることからチャレンジしてみると良さそうです。また緊張状態も原因のひとつになるので、悩み過ぎず、リラックスできる環境づくりを始めてみましょう。


(取材・文:阿部綾奈 編集:ノオト)