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うつ?それとも…?「低血圧」と「うつ病」の関係

2017.10.28

うつ?それとも…?「低血圧」と「うつ病」の関係


今や「うつ病」は「心の風邪」といわれるほど多くの人がかかるものとされています。気を付けたいのは「本当にうつ病なのか?」という点です。というのは、血液検査や医療機器によってうつ病と診断できるわけではないので、その診断が本当に正しいのか科学的根拠を得にくいのです。うつ病と診断された患者の中には、実は「低血圧だった」なんて人もいらっしゃるそうです。なぜそんなことになるのでしょうか?


『千代田国際クリニック』の永田勝太郎院長に取材しました。永田院長は著作『本当は怖い「低血圧」』でも知られる、血圧について深い知見と長い経験を持つ医師です。

取材協力・監修


永田勝太郎医師


1948年千葉県生まれ。医師・医学博士。『千代田国際クリニック』院長。『公益財団法人 国際全人医療研究所』理事長。WHO(世界保健機関)心身医学・精神薬理学 教授。リヒテンシュタイン国際学術大学院大学 ビクトール・フランクル講座 名誉教授。


⇒永田医師の著作『本当は怖い低血圧』(刊行:秀和システム)

http://amzn.asia/ge72eW9


⇒『千代田国際クニリニック』公式サイト

https://www.ciclinic.net/

■「うつ病」と「抑うつ反応」は違う!

永田先生によれば「本来の『うつ病』は精神障害のひとつで、『大うつ病性障害』という病気です。人は誰しも病気になったり、失恋したり、親しい人の死に遭遇などすると、気分が沈んで落ち込みます。これは健康な人にも起こる『抑うつ反応』です。


この抑うつ反応はうつ病ではありません。


アメリカの精神医学会のDSM(精神障害の診断と統計マニュアル)によれば、『大うつ病性障害』は以下のような症状のあるものと定義されています。

「大うつ病性障害」の症状


  • 2-3週間以上続く抑うつ気分がある

  • 意欲・興味精神活動の低下がある

  • 焦燥感、食欲低下、不眠、持続する悲しみを訴え、不安に苦しんでいる

まず誰にでもある抑うつ反応と『うつ病』を切り離して考える必要がある」とのことです。

■うつの症状は「低血圧」に似てる?

うつ病の診断に使われる心理テストのひとつに『SDS』(Self-rating Depression Scaleの略で「うつ性自己評価尺度」)があります。SDSは簡便であるため日本ではよく使われるのですが、「これにも問題がある」と永田先生は指摘しています。


永田先生によれば「SDSではうつと低血圧、および低血圧関連疾患との区別ができません。たとえば、『動悸(どうき)がする』『朝起きられない』『疲れやすい』などは、低血圧でも、また貧血でも起きます。うつと低血圧の症状には共通項目がたくさんあって、そのために、低血圧の患者さんがSDSを行うと、ほとんどうつという結果になってしまいます」とのこと。

■抗うつ剤は血圧を低下させることがある!

永田先生によれば「うつ病だと診断されて処方される薬にも問題がある」そうです。抗うつ剤の中には、血圧を低下させるものがあります。副作用として「起立性低血圧」「めまい」「ふらつき」がある、とされる抗うつ剤の場合がこれに当たります。


もともとうつ病ではなく低血圧の人がこのような薬を服用したらどうなるのでしょうか? さらなる低血圧となり、「めまいがひどくなった」「動けなくなった」となってしまいます。最悪なのは、それをうつ病が進行した、と医師が判断して抗うつ剤の量を増やすことです。こうなるともう医療過誤の領域にまで踏み込むような事態です。

■うつじゃなかった! 低血圧だったという事例

永田先生に伺ったところ、低血圧だったのにうつ病と診断されてどうしても治らず、本人も途方に暮れていたのに、抗うつ剤を徐々に止め、血圧を上げる治療に切り替えたところ、治癒に至ったという症例が実際に、いくつもあるそうです。

【永田先生が実際に治療を行った症例】


患者:女性(19歳)

看護大学の2年生だったので、講義でSDSを実施。自己採点すると高得点で、担当教官に相談すると精神科の受診を勧められる。精神科で「うつ」と診断され、抗うつ剤を処方される。服用しだすと「朝が起きられない」「ぼーっとする」といった症状が進行。そのことを再び精神科に相談すると薬を倍量にする処方を受ける。その後、「うつ病状態」が進行してしまう。

⇒脳外科から永田先生を紹介。永田先生が診察してみると、立位では測れないほど血圧が低いことから「低血圧」(起立性低血圧)からくるものと診断。抗うつ剤を徐々に減らし、血圧を上げる治療を行ったところ「うつ病状態」から脱却して、心身ともに健康な状態に回復した。


永田先生が実際に治療に当たった中でもこうした例はほかにもたくさんあるそうです。永田先生によれば「抗うつ剤(向精神薬も)の服用に当たっては十分注意しなければなりません。また、医師はもっと低血圧について意識を向けるべきです」とのことでした。



うつ病と判断されるとそれだけで心が暗くなるでしょう。人の心の健康を左右するメンタルヘルス分野でのケアは難しく、ましてや心が弱っていますから精神科医の処方どおりの薬を飲んでしまうかもしれません。しかし、それが本当に正しい治療なのか一度自分で疑ってみることも必要なようです。


(高橋モータース@dcp)