検索
お悩みスパッと解決塾 06:鈍感男子より、いっそAI(人工知能)を恋人に!?

2017.10.28

お悩みスパッと解決塾 06:鈍感男子より、いっそAI(人工知能)を恋人に!?


どんな人にもコンプレックスや悩みってありますよね。そしてそんなときにもらう、「こうすればいいよ」なんて正攻法なアドバイスは逆に心に響かないことも……。そこでこの連載では、毎回さまざまなお悩みをあらゆる分野の専門家や著名人に相談し、一風変わった視点からその解決法を探っていきます。



「私の彼氏は女ゴコロがちっともわからない『鈍感男子』。記念日もこちらが言わなきゃ覚えていないし、新しい服や髪型にもちっとも気づいてくれないしで、そろそろストレスも限界に……。あー、私の気持ちを察して理解してくれる理想の男性って、どこかにいないものでしょうか!?」(34歳、会社員)


「近い将来、AI(人工知能)が理想のパートナーになる時代が来るかも……!?」(データ駆動知能システム研究センター 専門研究員 大西 可奈子さん)



男性と女性は思考や行動などまったく別の生き物。女性同士のように「言葉にしなくても気持ちを察し合う」なんてふうに行かない場合も多いです。ついつい彼氏に対し、「なんでわかってくれないの!?」「本当はこう言ってほしいのに!」なんてモヤモヤしてしまうこともありますよね。


「それなら、生身の人間ではなくてロボットが理想のパートナーになってくれるかもしれませんよ!」と話すのは、AI(人工知能)を専門に研究している、「情報通信研究機構 ユニバーサルコミュニケーション研究所 データ駆動知能システム研究センター」の専門研究員・大西可奈子さん。


ビジュアルもキャラクターも自分の理想そのままのロボットを作ることができたら、相談者さんはもちろん、この世の男女すべてが恋人を欲しがる必要がなくなるかも……!? 

■そもそもAI(人工知能)ってなに?

今の時代、日常的に耳にするようになった「AI」という言葉。そもそも何のことなんでしょうか? 大西さん、まずは学生時代に科学の成績2だった私にもわかるようにやさしく教えてください!


「AIは日本語でいうと『人工知能』という意味の言葉ですが、この言葉の通り、人が行っている思考や学習といった知能をコンピュータ上に再現したもののことをいいます。


でも、実はAIには具体的な定義はありません。つまり『どのくらいのことができればAIなのか』ということは現状では誰にも決められないんですよ。


ただ、少なくとも“知能”と呼ぶからには、人が教えた以上のことができる必要があると私は考えています。つまり、単純に『AならばB』というルールを教えるのではなく、『AならばB』という情報を学習したうえでコンピュータ自身が別のルールを作ることができる、ということですね」



なるほど! 言われたことしかしない、というか、言われたことすらきっちりやれるかわからないポンコツの私なんかよりよっぽどAIのほうが有能そう……AI、すごい。

■AIは行動だけでなく感情までくみ取れる!

それにしても、AIは行動だけではなく、人間の思考や感情についても学習できるというお話にはビックリ! いったいどのぐらい人の心をくみ取れるんでしょうか?


「現在のAIは、たくさんの情報からルールやパターンを抽出することが得意です。たとえば、『こんな表情のときはこういう気持ちだ』とか『こういう言葉を発するときはこういう気持ちだ』といった大量の情報をコンピュータに学習させることができれば、人間の表情や言葉をカメラとマイクで確認し、学習したルールやパターンに基づいて気持ちを理解してくれるでしょう」


なるほど、“表情や言葉に対する気持ち”をコンピュータに大量にインプットすることで、人の思考や感情についてもルールやパターン化して覚えさせるのですね!


「コンピュータが抽出するルールは非常に柔軟なので、最初は感動するかもしれません。たとえば、『疲れた』という発言に対する回答を教えていなかったにもかかわらず、『お疲れ様』と返してくれるなんてことも!


これは、たとえば『しんどい』という言葉をあらかじめ与えていたとして、『しんどい』が『疲れた』と類似しているということを学習し、『疲れた』という言葉に対しても応用しているんですよ」


今回の相談者さんは不器用で鈍感な彼氏にお悩みですが、AI相手ならそんな不満もなくなるかもしれません。だって、AIなら事前に情報を与えておけば、状況に応じた的確なレスポンスをくれるんだもの。「それは私が望んでる答えじゃない!」なんてイライラも減りそうです。



これで見た目も自分の理想どおりのAIが作れたとしたら、もうリアル男性いらなくないですか……? ヤバい、私のほうが興奮してきた! 

■AI搭載のロボット、自分好みの外見に作れるの?

大西さん、相談者さんより私のほうがそんなAI欲しいです……! 山崎賢人のビジュアルをしたAI搭載ロボットを今すぐ私の部屋にください!! いくら出せばいいですか!?


「まぁまぁ、落ち着いて(笑) 今の段階でどの程度人間のビジュアルに近づけられるか。それは、触れられるロボットが欲しいのか、ただ目に見えるだけでよいのかによって実現性は大きく変わってきますね」


そ、そうなんですか……。


「ええ。ただ目に見えるだけでよいのであれば、CGで作成すればよいでしょう。まず間違いなく理想のビジュアルのロボットが作れます。


でも、実際にぬくもりまで感じられるロボットが欲しいとなるとハードルは上がります。顔を作るだけならなんとかなるかもしれませんが、実際に動作することができるものとなると、現状では理想のビジュアルのロボットを作成するのは非常に難しいんです」


たしかに、私たちは言葉だけじゃなくて、相手の手や肌のぬくもりで癒されることも多いですよね。不安なとき、手を握ってもらっているだけで勇気づけられたり。病気のときに背中をさすってもらうとラクになったり。そうした“ぬくもり”は人間ならではのものなのかもしれません。

■“忘れる”ことこそが人間らしさ

AIと人間とのちがいって、ほかにもあるんですか? たとえばAI的には苦手なことだけど、人間は得意とする分野とか……。


「ありますね~。たとえば、あなたが仕事ですごく疲れていたとします。あなたは一週間前にも同じように疲れていて、ため息をついていました。こういう状況であればAIはきっと、とても優しく、かつ的確に慰めてくれるでしょう。なぜなら一週間前に疲れているあなたを慰めたときに、あなたがとても喜んでいたことを憶えているから。AIは一度経験したことは忘れないんです。


一方、人間はどんなに大切なことでも忘れてしまうことがあります。AIが忘れないことは確かに利点なのですが、“忘れる”ことこそが『人間らしさ』なのかもしれません」


“忘れる”ことこそが『人間らしさ』。相談者さんの恋人のように記念日や約束をついつい忘れてしまうのは人間だからこそ。ロボットじゃないのだから当然のこと。そう考えると、少しはいら立ちも紛れるかもしれませんね。



とはいえ。AIの可能性を考えると、近い将来、ともに過ごすならAIをパートナーにしたいという人が男女ともに出てきてもおかしくなさそうです。


「まだ時間はかかると思いますが、私は将来そういう時代が来ると思っています! といっても人間の代替品としてではなく、ロボットという全く新しい概念として受け入れられるのではないかと考えています」


人間しかできないこと。AIだからこそできること。それらをうまく見極めていければ、すばらしい未来が待っていそうですね。それまで私たちは相談者さん同様、わかりあえない恋人にヤキモキしつつも、「そういう部分こそ人間らしい」とむしろ楽しむぐらいの気持ちで向き合っていくのがよいかもしれません。

★今回のアドバイザー



大西 可奈子さん(国立研究開発法人 情報通信研究機構 ユニバーサルコミュニケーション研究所 データ駆動知能システム研究センター 専門研究員)


2012年お茶の水女子大学大学院博士後期課程修了。 博士(理学)。同年、大手通信会社に入社。2016年より現職。一貫して自然言語処理、特に対話に関する研究開発に従事。人工知能(主に対話技術)に関する講演や記事執筆も行う。

twitter:@WHotChocolate

(取材・執筆/鷺ノ宮やよい 編集/ヒャクマンボルト)

⇒連載「お悩みスパッと解決塾」をもっと読む