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PMSの緩和・改善方法って?―1.「興奮・イライラ」タイプ

2017.10.31

PMSの緩和・改善方法って?―1.「興奮・イライラ」タイプ


前回はPMS治療において漢方が役立つことを詳しく解説しましたが、いよいよ具体的な治療法についてご紹介します。


まずは「興奮・イライラ」タイプについて、多くのPMSの患者さんを治療し、改善に導いている、銀座の研医会診療所 漢方科の岡田研吉先生にご解説いただきました。

取材協力・監修


岡田研吉 医師


公益財団法人 研医会診療所 漢方科。1972年、東邦大学医学部卒業。ドイツ・リューベック医科大学留学中に東洋医学を志す。帰国後、名古屋聖霊病院・藤枝市立病院に勤務する傍ら、国立東静病院で漢方療法を学ぶ。1982年に北京中医学院(現・北京中医薬大学)に1年間留学。東京・玉川学園で岡田医院を開業。著書に『素問次注集疏(上・下)』『傷寒論考注(上・下)』『宋以前傷寒論考』ほか。

■「興奮・イライラ」タイプってどんな人?

さて、まずはタイプについて、もう少し詳しくご説明していきましょう。


と、その前に、前回軽く触れましたが、「私たちの体は単なる独立したパーツの寄せ集めではなく、さまざまな規則性をもって関連し合っている」という点について、ここでもう少し詳しくお話したいと思います。


東洋医学では、各臓器の関連の仕方や個々の臓器の働きが、長年の経験則から体系的にまとめられています。これを図式化したものが「五行説」です。


「各臓器には、さまざまな役割がありますが、たとえば『肝(かん)(※1)』は精神・情緒の安定にかかわります。これは肝臓がストレスに弱く、イライラが続くなどメンタルの不安定によって機能低下を起こしやすいことからも理に適っているといえるでしょう」

※1 肝(かん)

漢方で「肝」「腎」という言葉を使う場合、その意味は「肝臓や腎臓などの臓器自体」と、「その臓器の機能、働き」を表しています。

そして、「興奮・イライラ」タイプというのは、大きく「肝の機能低下・異常が原因と考えられます」とのこと。


「もう少し具体的にいうと、ストレスなどなんらかの原因で肝に熱が生じている状態で、生じた熱は暖かく上へ昇る性質があるため、上半身のほうへ移動しますが、これが循環せずとどまってしまうため、頭や顔のほてりや熱感、口の渇き、のぼせ、いらいら、カーッとして興奮しやすい、頭痛、目の充血、便秘といったさまざまな熱症状が現れやすくなります。


このタイプの方は、普段から、多少の差はあるものの、精神、肉体の両面から熱症状の傾向をもたれがちです。それが月経前の時期になると、より強く現れるようになるというわけです」

■「興奮・イライラ」タイプにおすすめの漢方は?

具体的な漢方薬についてご紹介する前に、まずは「漢方(東洋医学)の治療の考え方のキホン」について簡単に。


漢方を含む東洋医学全般は「バランスを最重視する医学」です。その心はといいますと、基本的に健康とは「プラスマイナスゼロの状態」となります。


「単純に考えても、太りすぎや痩せすぎがよくないのは明白ですよね。また、余分なものがある(実証)、もしくは、必要なものが足りない(虚証)という、バランスの乱れが生じている状態について、西洋医学では基本、症状や数値によって『健康』と『病気』のふたつに分けますが、東洋医学では『未病(※2)』というポジションが存在します。


東洋医学が優秀な予防医学としての側面をもっているのは、この『未病』という区分けによるところが非常に大きいといえます」

※2 未病

簡単にいうと「病気と健康のあいだのグレーゾーン」です。病院やクリニックでは病気と診断されない、でも自分としては「ん~、なんか調子悪い……んだけど」という感じ、ありませんか? そんな状態から治療を始め、病気を未然に防ぐのが東洋医学の本質です。

では具体的な治療について、岡田先生、お願いします。


「このタイプでは、メインとなるのが『余分な熱(実熱:じつねつ)』で、その背景には『肝の機能低下(肝のバランスの乱れ)』があります。


おもな根本原因には『体内を潤す働き(陰:いん)の不足』『ストレスなどによる熱の発生にともなう心身を温める働き(陽:よう)の過剰』などいくつか考えられますが、さまざまな状況を複合的に捉え、さらに、多くの患者さんに類似処方をいくつか服用いただいたなかで、臨床的なエビデンスがもっとも高かった漢方薬が『加味逍遙散』になります」

【加味逍遙散(かみしょうようさん)】

構成生薬:芍薬(しゃくやく)、茯苓(ぶくりょう)、白朮(びゃくじゅつ)、当帰(とうき)、生姜(しょうきょう)、甘草(かんぞう)、柴胡(さいこ)、牡丹皮(ぼたんぴ)、山梔子(さんしし)、薄荷(はっか)

「一般用医薬品の本処方は、基本的に、体に必要なものが足りていない『虚証』気味(多くは胃腸虚弱など)の方の、自律神経の異常によるのぼせや火照り、イライラなどの熱症状、血の道症全般ならびに更年期の不調、月経不順・月経困難、不眠症などに効果的とされる処方ですが、医療の分野では、特に女性の自律神経の失調に伴う精神・肉体面の諸症状に対して有効となります(※3)。


また、『興奮・イライラ』タイプには便秘傾向の方も多いのですが、PMSの諸症状改善とともに便秘も解消していくケースが大変多く見られます」

※3

加味逍遙散は、お医者さんが処方する「医療用医薬品」と、街のドラッグストアなどで買える「一般用医薬品」では、メーカーにもよりますが、効能効果に多少差異のある場合があります。

■避けたほうがいい食べ物は?―「興奮・イライラ」タイプの場合

「日常生活において、第一に気をつけたいのが『熱を取り込まないようにすること』ですね。たとえば、日々の食事なら、キムチ、トウガラシ、ラー油、ニラ、にんにく、といった熱性・温性の食材は控えるのがいいでしょうね」


特に夏場の暑い時季など症状が強くなる期間は、「控える」というより「厳禁」にしたほうがいいそう。一方で、積極的に取りたい食材としては、きゅうり、なす、トマトなどの冷やす野菜、肉なら潤す豚肉、夏場であればスイカ、秋には梨、などが挙げられます。


今回はあくまでも治療の第一歩として、大まかなタイプ分類に対する第一選択をご紹介しました。より詳しい内容については、岡田先生のような専門医にご相談ください。


(取材・文 岩井浩)