月経のある女性の10人に1人は「子宮内膜症」になっているといわれ、治療を受けている患者数は13万人に上ります。子宮内膜症は実は診断の難しい病気で、自覚症状があれば深刻な事態になる前に専門医に受診するのがおすすめです。では、どんな自覚症状があったら子宮内膜症を疑えばいいのでしょうか?

記事監修



坂口健一郎先生


産婦人科専門医。日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。防衛医科大学校卒業後、防衛医大病院で研修ののち、多数の病院で勤務。内視鏡手術に特化したクリニックの院長を経て現在、不妊症専門のクリニックで勤務中。

■子宮内膜症の主な症状は「痛み」「不妊」

子宮内膜症の主な症状は、

  • 年齢とともに強くなっていく月経痛

  • 不妊

  • 月経時以外の下腹痛、腰痛、性交痛、排便痛

です。ただし、自覚症状がないこともあって、そのため子宮内膜症であることに気付かないこともあります。子宮内膜症患者にデータを取った統計によれば、約9割の人に月経痛があります。しかし、月経時に月経痛があるのは当然のことと考えられるので、痛みがあっても、子宮内膜症ではなく普通の月経痛と思ってしまうのです。月経痛があまりにひどいと、それはそれで「(機能性)月経困難症」なのですが(子宮内膜症は器質性月経困難症に分類されます)。

■子宮内膜症の場合、自覚症状はある?

子宮内膜症は「子宮内膜に似た組織が、何らかの原因で子宮以外の場所で増殖・剥離(はくり)と出血を繰り返し、それによって炎症、痛み、癒着が起こる」という病気ですが、多くの場合良性のもので、無自覚のまま日常生活を送っているという人も多いのです。


不妊治療のスクリーニング検査で子宮内膜症と言われた、帝王切開で赤ちゃんを取り出す際に子宮内膜症が見つかった、という例もあります。つまりこれらは、不妊でも、妊娠していても、また本人が無自覚でも子宮内膜症にかかっていることがあるという実例です。


多くの場合良性とはいうものの、大きく増殖した組織が破裂して強い痛みを感じたり、卵巣・卵管で組織が増殖して妊娠を阻害したりすることがあるのも事実。ですので、早めに発見して対処するのが良いでしょう。


年齢とともにだけでなく、月経のたびに生理痛がひどくなる、鎮痛剤の量が増えている、といった場合には子宮内膜症を疑ったほうが良いのです。


また、「生理時以外の下腹痛」というのもポイント。セックスの際に膣の奥が痛くなるような「性交痛」、また排便時に肛門の奥が痛む「排便痛」がある場合には特徴的です。また、慢性的な下腹痛に悩まされている場合には、やはり専門医に受診するようにしましょう。


問題は、自覚症状の全くない人です。


子宮内膜症患者で性交痛があるのは50%前後、排便痛があるのは60%前後。不妊についても、子宮内膜症患者の50%が不妊を合併している、また逆に不妊症患者の50%が子宮内膜症といわれますが、子宮内膜症だからといって必ず不妊になるわけではありません。帝王切開で赤ちゃんを産み、その手術の際に子宮内膜症が見つかった、なんてケースがあることからも分かるとおり、子宮内膜症を発症していても妊娠、出産に至ることもあるのです。


子宮内膜症は診断が難しい病気で、専門医によれば「エコー検査で卵巣が明らかに腫れていると分かることもありますが、外科手術でおなかを開けてみて初めて分かるケースもある」とのことです。自覚症状がない人も通常の健康診断だけで良しとするのではなく、より専門的な検診を定期的に受けるのがいいですね。

■子宮内膜症はどうやって見つけるの?

アメリカ生殖学会(revised-American Society for Reproductive Medicine/略称:r-ASRM)によれば、手術時の病巣の場所・状態、また癒着の状態が点数化されていて、その点数によって子宮内膜症の進行度は4つのステージに分類されています。

●r-ASRMによる子宮内膜症の進行度の分類


ステージ1(1-5点):微少(minimal)

ステージ2(6-15点):軽症(mild)

ステージ3(16-40点):中等症(moderate)

ステージ4(41点-):重症(severe)

たとえば「腹膜」に病巣があり、病変の大きさが3cm以上になると「4点」で、その場合は上記のとおり「ステージ1」の「微少」になる、という具合です。同じ3cm以上の病変でも、病巣が「卵巣」の深いところにあれば(深在性)「20点」、また癒着がフィルム様で「-1/3」であれば「1点」ですので計「21点」。これは「ステージ3」の「中等症」になるのです。このようなステージによる進行度の分類は医師が治療方針を立てるときに使われます。


子宮内膜症の診断が難しいのは、上記のように「ステージの進行と自覚症状がリンクしないことが少なくない」という点にもあります。「微少」と判断されるような軽度の子宮内膜症であるのにひどい痛みを感じる人も、かなり重い子宮内膜症であるのにあまり痛みは感じないという人もいらっしゃいます。このように自覚症状の程度の差も大きいため、子宮内膜症と確定するためには、血液検査、エコー(超音波検査)、MRI(磁気共鳴画像検査)、腹腔(ふくくう)鏡検査といった検査が必要となるのです。



子宮内膜症は自覚症状がない場合も多く、専門医に受診することが遅れがちです。なるべく早く見つけるためにも、やはり1年に一度は精密検査を受けることが必須といえます。

⇒参考:

・『日本産科婦人科学会』「研修コーナー」63巻 4号

http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/kenshu_63-4.pdf

・『日産婦誌63巻4号』「III.子宮内膜症」

http://www.jsog.or.jp/PDF/63/6304-032.pdf

・「Classification of Endometriosis」(子宮内膜症診断用)

http://www.endometriosisinfo.ca/documents/11FORM_ClassificationForEndo_EN.pdf

(高橋モータース@dcp)