咳が出ても、「風邪をひいたのかな?」と思うだけで放置してしまっていませんか?実際に風邪から咳が長引くこともあるので、「わざわざ医療機関を受診するまでもない」と思う人も多いでしょう。でも、その咳、長引いてしまっていませんか?もしかしたら、思いもよらない病気が隠れている可能性もあります。


今回は長引く咳の原因と考えられる病気について、医師の筆者が解説します。

■まずは咳のしくみを知ろう!

咳は、ウイルス、煙、ほこり、食べ物等の異物から、肺、気管、気管支を保護するための「防御反応」です。咳をすることで、気道に溜まった痰を排泄する働きも担っています。



息をするときの空気の通り道を「気道」というのですが、この気道には、細かい毛と粘液に覆われた粘膜があり、これらが外部から入ってきた異物を除去しているのです。


たとえば、鼻から異物が入ってきた場合、鼻毛、鼻腔内の粘液・線毛(せんもう)、くしゃみによって除去します。


そして、喉においては、咽頭入口を囲むように配置されているリンパ組織「ワルダイエル咽頭輪」、咳によって除去されるのです。肺胞内における免疫細胞である「肺胞マクロファージ」も、私たちの体を保護する働きをしています。

■長引く咳から考えられる病気とは?

咳は、原因となる病気により症状が続く期間が違います。また、痰を伴う咳があるかによっても原因が異なります。


咳が出る原因の多くが風邪ですが、「3週間以上続く」、「空咳が8週間以上続く」などの場合は、何らかの病気である可能性があるため、速やかに医療機関を受診しましょう。

【1カ月以上咳が続く場合】


咳が1カ月以上続く場合、以下のような疾患の可能性が考えられます。


①咳喘息

慢性的に咳が続く気管支の病気です。喘息と同様、気道が狭くなるため、さまざまな刺激に対して過敏になり、炎症や咳の発作が起こります。風邪に伴い出現することが多く、風邪をひいた後、2-3週間以上咳が続く場合は咳喘息の可能性があります。


症状が悪化していると咳が1年以上続いてしまうことも。喘息に見られる「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」といった呼吸音や呼吸困難等の症状はありません。また、痰や発熱の症状もあまりみられません。


夜中から早朝にかけて激しい咳が出やすい傾向にあります。咳発作がひどいときは、胸に痛みを感じたり、失神したりすることもあります。


②アトピー咳嗽(がいそう)

血液中の好酸球が多くアトピー素因を持つ人が、痰が出ない咳を1カ月以上している場合この病気の可能性があります。気道の表面が過敏になり、夜中から早朝にかけて咳が出る傾向にあります。


タバコの煙やエアコン、運動、ストレス、日常会話等でも咳がでます。女性ホルモンと深く関わっていて、閉経後の中年女性に多い傾向にあります。


③副鼻腔気管支症候群

睡眠中に鼻水が喉の奥に降りて気管支に入ってしまうため、気管支炎の原因になります。


緑色や黄色で粘性のある鼻水が出る、鼻が詰まる、頭痛、顔面痛、鼻ポリープ、口臭、嗅覚障害等の症状が現れることが多いといわれています。


④マイコプラズマ肺炎

肺炎マイコプラズマという細菌に感染して起こります。呼吸器の感染症で、冬に多くみられます。子供や若年層の感染が多く、患者の約8割が14歳以下です。


症状としては、37℃から39℃以上の高熱、咳、痰がからむ、喉の痛み、鼻詰まり、鼻水、呼吸困難等の症状が現れることが多くなります。


⑤百日咳

百日咳という名前の通り、百日間もの長い期間激しい咳が続く病気です。


百日咳菌という細菌が気道粘膜に感染することで発症します。百日咳菌に感染すると、気道粘膜が剥がれて炎症が起きて大きなダメージを受けます。そして、痰を出しづらくなったり、少しの刺激でも咳が誘発されやすくなったりします。


発作性けいれん性の咳が長期的に続くことが特徴です。熱が出ることは少ないですが、連続的な咳込みが止まらなくなることがあり、嘔吐やチアノーゼ、結膜充血、顔面浮腫等の症状が現れます。咳発作は夜間に起こりやすく、不眠にもつながる恐れがあります。


⑥結核

結核菌による感染症です。痰の中に結核菌が出るようになってしまった結核患者の人が、咳やくしゃみをすることでしぶきが飛び散り、その中の結核菌を吸い込むと結核がうつるといわれています。しかし、たとえ吸い込んでも鼻、喉、気管支で食い止めて肺まで到達しなければ感染しません。


数週間以上咳が続いたり、血痰がでたりします。発熱しても微熱ですが、ときに高熱が出て咳が2週間以上続くと結核の可能性があります。


⑦薬剤性

一部の血圧の薬を内服することによって、その副作用として咳がでることもあります。かかりつけ医に相談されてください。


⑧逆流性食道炎

胃液が食道へ逆流することによって刺激され、咳が続くこともあります。肺や気管に問題がなくても咳が出るので、胸やけや、詰まり感があればその可能性が高くなります。


⑨肺がん

肺の細胞ががん化してしまう病気です。肺内での異物がある状態ですので咳が出る場合もあります。疑われる場合には胸部レントゲン、CTなどで診断していくことなります。



風邪が原因の咳は、1-2週間くらいで治ります。しかしそれ以上続く場合は何らかの病気が隠れている可能性も考えられます。長期間咳が止まらないときは、我慢せず病院へ行くことをおすすめします。


また、ストレスを溜めないようにすることも重要です。ストレスも気道を過敏にさせる原因になります。そのため、十分な睡眠、休養をしっかりとり、ストレスに負けない抵抗力を備えましょう。


まずは長引く咳の原因を知り、適切な治療方法で対処することが大切です。放置すると重症化する可能性もあるので、たかが咳と軽視せず、自分の体としっかりと向き合うようにしてくださいね。



(執筆 岡村信良/医療法人小田原博信会 理事長、医学博士-健康検定協会-)