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睡眠クリニックの院長に聞いた。上手に眠る方法とは?

2017.04.05

睡眠クリニックの院長に聞いた。上手に眠る方法とは?


読者の皆さんはよく眠れていますか?快眠快食は人間の健康の基本といわれます。睡眠時間が不十分、また睡眠の質が悪いと、日常生活に支障を来すことも。不眠で悩んでいる人は思いのほか多いようですが、その原因・解消方法はどのようなものなのでしょうか!?


不眠、その治療についての長い経験を持っていらっしゃる東京疲労・睡眠クリニックの梶本修身院長にお話を伺いました。

取材協力・監修

梶本修身院長


大阪大学大学院医学研究科終了。医学博士・医師。大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座特任教授。『東京疲労・睡眠クリニック』院長。『すべての疲労は脳が原因2』(集英社新書)、『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)など著書多数。


⇒『東京疲労・睡眠クリニック』公式サイト

http://疲労クリニック.com/

■不眠とは?

「不眠症」という言葉はよく使われますが、実はひとつの症状で「これが不眠症」という定義はありません。睡眠障害は、入眠障害、中間覚醒、熟眠障害、早朝覚醒などさまざまですが、梶本先生によれば「疲労を回復させるために必要な分だけ眠ることができず、そのために日常生活に苦痛や支障を来すようになってしまったら、その睡眠障害は『不眠症』という言葉に当たると考えられます」とのこと。


また、梶本先生によれば「平均睡眠時間」という考え方には意味はないそうです。人それぞれに「必要な睡眠時間」「眠りの質」は異なっており、それが満たされないと駄目だといいます。ですから「何時間寝たから大丈夫」といった考え方はあまりしないほうが良いのです。


睡眠の目的は、前日の疲労を回復させることです。そのために必要な眠りの質をどうしても満たすことができない、またどうしてもあなたに必要な時間眠ることができない、という場合には、平均時間を上回っていようが下回っていようが、それは「不眠」で「睡眠障害」といえるのです。

■なぜ不眠になるのか?

では、なぜ不眠になるのでしょうか? そのメカニズムについて梶本先生に伺いました。


――不眠の原因、その仕組みはどうなっているのでしょうか?


梶本先生 まず睡眠のリズムを作るのは自律神経です。自律神経が疲弊あるいは更年期障害などで自律神経が不調に陥ることで、睡眠リズムが乱れます。


自律神経は交感神経と副交感神経から成っています。交感神経は覚醒を促し、副交感神経はそれをなだめる役割をします。自律神経が不調なとき、交感神経が優位なときは寝入りが悪い。なかなか寝付けないという入眠障害になりがちです。これが典型的なパターンですね。


――中途覚醒もそうなのでしょうか?


梶本先生 たとえば「トイレで目が覚める」わけではないのに夜中に何度も起きてしまう、ということが起こるのは、交感神経だけではなく、自律神経全体が疲れていることが多いのです。


若い女性の場合には生理周期、体の状態が整っていない状態で自律神経の働きが乱れる、といったことが起きがちです。たとえば生理前になると眠りにくい、とか。交感神経優位の状態が生じやすくなったり、とか。このように生理周期と関係する場合もあります。

■不眠対策は「生活リズムを整える」のが第一歩!

問題は不眠状態から脱する方法です。 不眠に悩まされずに済むにはどうすればいいのでしょうか? 梶本先生によれば、


「生活のリズムを整えること」


が、まず第一歩とのことです。睡眠のリズムをつかさどっているのは自律神経。自律神経が疲れてくると睡眠リズムも崩れるのです。自律神経を疲れさせないためには、交感神経・副交感神経のバランスをうまく取ってやらなければなりません。


日常生活の中でできる対策として、梶本先生に以下のようなポイントを挙げていただきました。

●日常生活でできる不眠対策


・朝は光を浴びること。カーテンを閉めて部屋に閉じこもっていると脳が起きません。外に出なくてもいいですが、少なくともカーテンを開けて光を浴びて生活をする。


・夕方からは、今度は夕焼けのようなオレンジライト、電球色でもいいですが、もう少し夕焼けの色に近い間接照明の中で過ごす。


・眠る2時間前からは食事をしてはいけません。


・運動も眠る前2時間以内にはしてはいけません。ただしセックスは別です。セックスは交感神経を高め、その後一気に副交感神経が優位になります。「セックスのあとは眠くなる」というのは自律神経の機能からも正しいのです。


・お風呂は眠るちょうど1時間前に入るのが理想。

これらは交感神経と副交感神経のバランスを取り、生活リズムを整えるために行います。梶本先生によれば、ポイントは「昼間は交感神経優位な状況をつくり、夕方からは副交感神経優位のリラックスした状況をつくること」だそうです。


また、梶本先生から「生理周期による不眠がある人の場合には生理不順があったりします。それをコントロールするために婦人科の診察を受けたほうがいい場合もあります」というアドバイスがありました。

■不眠に関するウワサの真偽

梶本先生に睡眠に関していわれていることについて伺ってみました。


――「早く眠る方法」はあるのでしょうか?


梶本先生 先ほどお風呂は眠る1時間前と言いましたが、これは理由があって「体の中を温めて、足元を温めておくと眠くなる」のです。こたつに入ると眠くなるでしょう? 湯たんぽもそうですが、人間は足元を温めると眠くなるのですね。その上で上半身を涼しい環境に置いてあげると眠りやすくなります。これは副交感神経支配に変わる環境にしてあげているのです。


ただし、大事なのは体の内部の熱を放散することです。温まった後、熱を放散するときに眠りは深くなります。足の裏からは熱の放散が起こっています。こたつに入ると眠りやすいけど熟睡できないのは、熱がこもりきりで放散されないからです。ですから、靴下をはいて眠るのはおすすめできません。湯たんぽは温めてくれて、だんだんお湯がぬるくなって温度が下がりますね。だから眠りには良い機器だといえます。


――「息を止めると早く眠れる」というのは本当でしょうか?


梶本先生 それはどうでしょうか。うそだと思いますよ。眠るときにはあまり呼吸の仕方をいじらないほうが良いでしょう。女性の場合「過換気症候群」という人が少なからずいらっしゃって、酸素を取り入れ過ぎといったこともありますので。


――「眠るために羊を数える」なんていわれますが、これは効果がありますか?


梶本先生 単純作業を繰り返すと脳がほかのことをしない、ということですね。脳の高次機能を使っているとどうしても頭がさえてくる、つまり交感神経優位になってしまうので、それをしないための方法としてそのようなことがいわれるのですね。


興味のないものを見てぼーっとしているときこそ副交感神経支配の状況なわけです。スマホなどを使って興味のあることを調べたり、見たりしていると眠くならないですね。逆に難しくて全然興味のない本を読んでいると眠くなってくる、これと同じ理屈です。副交感神経が優位な状況をつくって眠くする、というわけです。

■お医者さんにかかったほうが良い「不眠」とは?

梶本先生によれば「不眠によって日常生活に支障を来すようになり、自分では改善できないのであれば医師にかかったほうが良い」とのこと。ポイントは「普段の活動が不眠によって阻害されているか?」です。


前記のとおり「平均睡眠時間」などは当てにしてはいけません。あなたにはあなたに最適な眠りの質があるのです。それがどのようなものかは病院で測定可能とのこと。筆者も驚いたのですが、現在では「自分の睡眠がどのようなものなのか」を測定するキットがあるのです。


人間は深い眠りに入ったときには、ノンレム睡眠(眼球が動かず脳も休んでいる)という状態になるのですが、その深さ(ステージが1-4まであります)を測定可能とのこと。


たとえば、梶本先生のクリニックでは患者に宅配便でキットを送り、データが取れたらそれをクリニックで分析、といったことを行っているそうです。しかもその検査料は宅配便送料込みで3,000円(健康保険適用)ほどです。



昔はクリニックに入院してもらって測定していたそうですが、それだと眠れない、また逆に普段はないほど眠ってしまう人もいて、なかなかうまくいかなかったそうです。自宅であれば「いつもの自分の睡眠」について調べることができますからね。



もし、あなたが「不眠症」と呼ばれておかしくないほど眠れなくて困っているのであれば、一度お医者さんに診てもらうのが良いのではないでしょうか。



(高橋モータース@dcp)