口周辺、また唇に小さな水膨れ(水疱:すいほう)ができた、なんてことはありませんか? 「口唇ヘルペス」といわれるものですが、ピリピリと痛みを感じて食事をするのも嫌になったりしますね。口唇ヘルペスはなぜ起こり、どうすれば治療できるのでしょうか?
記事監修
小澤佑美 先生
皮膚科医。医学博士、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。
現在同じく皮膚科専門医の妹とともに父の開業するクリニックで皮膚科・美容皮膚科を担当しています。女性ならではのキメ細やかな診療を心がけています。
日本美容皮膚科学会、女医+(じょいぷらす)所属。
■口唇ヘルペスの原因って?
『日本性感染症学会』によれば、
10歳代後半を過ぎると、親族からよりもキスなどの性的接触によって単純ヘルペスウイルスに感染する機会が増える。未感染者が濃厚な接触によって口腔咽頭から単純ヘルペスウイルスに初感染すると、一部の人に口唇炎、歯肉口内炎、咽頭炎、扁桃(へんとう)炎を発症する。
⇒参照記事:『一般社団法人 日本性感染症学会』「性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016」
http://jssti.umin.jp/pdf/guideline-2016.pdf
となっています。ですので、いわゆる口唇ヘルペスは「単純ヘルペスウイルスが引き起こす口唇炎」なのです。
口唇ヘルペスを引き起こすのは「単純ヘルペスウイルス」です。単純ヘルペスウイルスには、1型(HSV-1)と2型(HSV-2)がありますが、このうち1型(HSV-1)が主に口唇ヘルペスの原因となります(HSV-2は主に性器ヘルペスの原因になります)。
しかし、ウイルスに感染した人全てが発症するわけではありません。初感染者の約90%は特に何の症状もないまま終わるのですが、約10%の人で発症が見られます。
「口唇ヘルペスはキスでうつる」なんていわれますが、単純ヘルペスウイルスの保持者が保持していない人にキスした場合には、それでウイルスに感染し、口唇炎を引き起こす可能性があります。
感染経路がキスだけとは限りませんが、キスすることによって感染する可能性があるのは本当なのです。
■口唇ヘルペスの症状とは?
口唇ヘルペス(単純ヘルペスウイルスによる口唇炎)では主に以下のような症状が見られます。
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口の周辺、唇に水疱ができる(口唇疱疹:こうしんほうしん)
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疼痛(とうつう:ずきずきとうずくような痛み)または灼熱感(ヒリヒリと焼けるような熱さを感じる)
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口唇皮膚には何もなく、口中にアフタ※が現れることもある
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38-40度の発熱が見られることもある
※アフタとは「白い膜に覆われた潰瘍のこと」です。
口唇組織だけではなく、同じ単純ヘルペスウイルスが「歯肉口内炎」「咽頭炎」「扁桃炎」を引き起こすこともあります。歯肉口内炎の場合には食べ物をそしゃくするのが痛かったり、咽頭炎の場合には食べ物を飲み込むのが痛かったりと、食事に支障を来します。
■口唇ヘルペスの治療法
口唇ヘルペスでひどい痛みがある場合には、一刻も早く治療したいところです。治療では、単純ヘルペスウイルスを退治するために以下のような薬(ウイルス感染症の治療薬)が処方されます。
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軽症・再発の場合
アシクロビルを主成分とする軟こう(患部に塗ります)
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症状が重い場合
アシクロビル錠(服用します)
バラシクロビル錠(服用します)
軟こうでは「ゾビラックス軟膏(なんこう)」(これは商品名)が有名です。処方薬ではなく、同様の「アシクロビル」「バラシクロビル」を主成分とする一般市販薬もあります。ただし、一般市販薬の場合、初めての発症時は購入できません。2回目以降の再発した際に購入可能です。購入の際は薬局で薬剤師から十分に説明を受けるようにしましょう。
■口唇ヘルペスは再発する!
口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルスは根絶することができません。ふだん、ウイルスは神経細胞に潜伏していて、発症の際には皮膚組織で増殖し、また症状を引き起こすかもしれないのです。つまり、口唇ヘルペスは根治することが難しいのです。
再発しやすいのは体の免疫システムが弱っているときです。主に以下のような場合には再発しやすいといわれます。
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強いストレスがある
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疲労している
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紫外線を多く浴びる
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風邪をひいている
女性では、月経が再発の誘因となることも指摘されています。また、口唇ヘルペスは感染症ですから、自分がかかったら接触によって他人にうつさないように注意しなければなりません。
口唇ヘルペスになると食事もおっくうになりますし、見た目を気にして人に会うのも嫌になったりしますね。憂鬱(ゆううつ)な期間ができるだけ短くなるように、症状が現れたら早く医師の診察を受けるようにしましょう。
(高橋モータース@dcp)
●再発した口唇ヘルペスには
疲労などによる免疫力の低下で再発した口唇ヘルペスは、市販薬で治療することもできます。薬剤師の支持を受けながら、薬局で購入することをおすすめします。
(マイカラット編集部)