「子宮内膜症」は、月経のある女性の10人に1人が罹患していると推定されています。放置していると、重篤な事態を引き起こす可能性もあるそう。今回はこの子宮内膜症について『ジャスミンレディースクリニック池袋』の院長・内田美穂医師に取材しました。
取材協力・監修
内田美穂医師
『ジャスミンレディースクリニック池袋』院長。東邦大学医学部卒業。産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医。
東京都立駒込病院臨床研修医、順天堂大学医学部付属順天堂医院、産科婦人科立出張佐藤病院、社会福祉法人賛育会病院、東京慈恵会医科大学新橋検診センター、昭和大学横浜市北部病院女性骨盤底再建センターを経て、現職。
⇒『ジャスミンレディースクリニック池袋』公式サイト
■子宮内膜症とは?
そもそも「子宮内膜」は子宮内側にある上皮組織ですが、そのうちの「機能層」と呼ばれる部分は排卵後に受精卵の着床に備えて厚くなります。そして受精卵が着床しなかった場合は、はがれて経血となって月経時に排出されます。
内田院長に伺ったところ、子宮内膜症とは、
「子宮内膜によく似た組織がなんらかの原因で子宮以外の場所(卵巣、卵管、子宮周囲の腹膜、ときには子宮から遠く離れた肺など)で増殖してしまう病気です。これが炎症や痛み、癒着を起こします」
とのこと。子宮内膜症になると下のような症状が見られるそうです。
●子宮内膜症の症状
・年齢とともに強くなっていく生理痛
・不妊
・生理時以外の下腹痛、腰痛、性交痛、排便痛
特に卵巣内部で発生する子宮内膜症では「チョコレート嚢腫(のうしゅ)」といわれるものがあります。
●チョコレート嚢腫
卵巣の内部に発生する子宮内膜症。卵巣内で増殖した子宮内膜から月経のたびに出血が起こり、出血は卵巣に貯留して嚢胞を形成します。出血は時間の経過とともに茶褐色をしたチョコレート様に変化し、そのためこの名前が付いています。
上記のような症状に心当たりがある人は「子宮内膜症」かもしれません。自覚症状がある場合には専門医にかかることをおすすめします。
■子宮内膜症はどんな治療をするの?
子宮内膜症の治療について内田院長にお話を伺いました。
――治療にはどんな方法があるのでしょうか?
内田院長 子宮内膜症の治療には、
・薬物療法
・手術療法
があります。後者の手術療法は、その名のとおり外科的手段で、異常のある組織を切除します。
薬物療法として、まだ嚢腫が小さく、現時点で妊娠を望まない場合は「低用量ピル」や「ジェノゲスト」が内膜症による痛みの治療や子宮内膜症自体への治療の第一選択薬として用いられます。
ほかには「GnRHアゴニスト」という薬による治療もありますが、この薬は女性ホルモン量を下げ、体を閉経の状態に近付けるため、更年期症状や骨量の減少といった副作用があります。
また投与期間の6ヵ月が過ぎた治療後に病変が再び増大することが多く、進行を一時的に抑える治療にとどまってしまいます。更年期の患者さんならそのまま閉経に持ち込むことを狙って使用することもありますが、長期投与には適していません。
いずれの薬物療法もチョコレート嚢胞を小さくする効果は期待できますが、消失させるのは困難です。
■子宮内膜症は予防できる?
――子宮内膜症の予防はできるのでしょうか。
内田院長 子宮内膜症は月経のたびに月経血がおなかの中に逆流することが原因といわれています。したがって、月経回数が少なくなれば内膜症にかかるリスクは低くなります。
また子宮内膜症は診断の難しい病気でもあります。エコー検査で卵巣が明らかに腫れていると分かることもありますが、外科手術でおなかを開けてみて初めて分かるケースもあるのです。
――では生理痛がひどいのです、と受診しても子宮内膜症かどうかはすぐには分からないのですか?
内田院長 そうですね。エコーで分からないこともありますし、MRIを用いてやっと分かったといったこともあります。それだけ診断が難しい病気といえます。ですので予防というよりは、早く見つけて重くならないようにする、のが現実的な対処法でしょう。
――そのためにはどうすればいいのでしょうか?アドバイスをお願いします。
内田院長 健康診断をおろそかにせず、1年に1回は必ず「子宮頸(けい)がん検診」と併せてエコー検査を受けることをおすすめします。また検診で異常が見つからなくても、たとえば生理痛がひどい、また重くなってきたといった自覚症状があればすぐに専門医を受診しましょう。
子宮内膜症の場合、月経時以外でも下腹痛を感じたりします。このような症状があったら放置せずに医師に診てもらってください。上記のとおり、放置すると将来的に不妊を引き起こしたり、がん化する可能性もあります。早く診てもらい、早く対処することが大事です。
――ありがとうございました。
月経のある女性の10人に1人、つまり10%が子宮内膜症ではないかといわれています。かなり罹患者が多いのに発見の難しい病気なのです。内田院長のお話にもありましたが、やはり早期発見・早期対処こそ、将来の「不妊」などの重篤な事態を防ぐことにつながります。「おかしいな」と感じたら専門医に受診するようにしてください!
(高橋モータース@dcp)