どんな季節でも、お寿司やお刺身などのおいしい魚介類を生で楽しむことができます。しかし、こうした状況は「魚介類の寄生虫による食中毒のリスク」も比例します。日本において、魚介類の寄生虫が原因となって起こる食中毒で最も多いのが「アニサキス」です。今回は、アニサキスについて解説します。

■アニサキスってなに?

アニサキスとは、主に魚介類に寄生している寄生虫の一種。体長は2~3cm、幅は0.5~1mmほどです。糸くずのような姿をしていて、意識して見れば肉眼でも発見することができます。


魚介類の中でも、特にサバに寄生していることが多いといわれています。ほかには、サケ、イカ、イワシ、カツオ等への寄生も多いようです。

■アニサキスに感染する経路とは?

アニサキスの成虫は、イルカやクジラなど、海にいる哺乳類の胃に寄生しています。哺乳類の体中に寄生している成虫の虫卵が、糞便と共に海の中に排出され幼虫に成長すると、オキアミなどの甲殻類が体中に取り込みます。


このオキアミをエサとする魚介類は多いため、アニサキスの幼虫は魚介類の体内に留まって寄生し続けるのです。


こうしてアニサキスに寄生された魚介類を人が食べると、次にアニサキスは人の体内へと侵入します。これが、アニサキスが人に寄生する経路と考えられています。

■アニサキス症とは?

アニサキス症とは、アニサキスが寄生している魚介類を生で食べたときに起こる食中毒のことです。アニサキスの幼虫が胃の中に侵入することで引き起こされます。アニサキスの幼虫を除去しないと、症状は治まりません。


アニサキスが体内に侵入しても、通常は何事もなく排泄されますが、まれに胃や腸壁に侵入し、激しい痛みを起こします。その場合は、以下のように呼ばれます。


  • ① 胃アニサキス症

    食後2~8時間後に、上腹部に激痛、悪心、嘔吐等の症状が出現し、吐血することもあります。劇症型アニサキス症ともいわれ、アニサキス虫体が胃の粘膜に侵入することで激しい痛みに襲われるのが特徴です。


    緩和型胃アニサキス症という、痛み等の症状が全く出現しない種類の胃アニサキス症もあります。

  • ② 腸アニサキス症

    食後10時間~数日経過したのち激しい腹痛、悪心、嘔吐等の症状が出現します。アニサキス虫体が腸に侵入すると起こり、腸閉塞等を併発して手術が必要になることもあります。虫垂炎と症状が似ていることがあるので注意が必要です。

  • ③ 消化管外アニサキス症

    アニサキス虫体が消化管に孔をあけて腹腔内に脱出し、大網腸間膜、腹壁皮下へ移動し、好酸球性肉芽腫を形成する可能性もあります。

■アニサキス症の対処法、予防法とは?

【対処法】

アニサキスの幼虫は、人の体内では1週間程度で死滅することが多いといわれています。現在、アニサキスに対する有効な駆除薬や特効薬は存在していません。

  • 胃アニサキス症の場合

    内視鏡検査にて確認し、アニサキス虫体を摘出すると激痛が治まります。

  • 腸アニサキス症の場合

    一般的には痛み止めや吐き気止め等の対症療法が行われます。しかし、腸に寄生すると腸管が厚くなり、腸閉塞を起こすことがあるので、その場合は手術で摘出します。

【予防法】

  • ① 目でよく見て点検する

    魚介類を生食するときは、必ず目視で点検しましょう。

  • ② 食べる前に冷凍処理する

    生で魚介類を食べるときは、購入後一度冷凍することでアニサキス食中毒を予防することができます。(-20℃で24時間以上の冷凍)

  • ③ 加熱調理する

    最も安全な調理方法は、中心部まで加熱(60℃で1分間以上の加熱)することです。加熱することで、アニサキス以外の食中毒も予防することができます。

  • ④ 魚類の内臓は生食しない

    アニサキスが寄生している可能性が高い魚類の内臓部分は、アニサキス症発症のリスクを回避するためにも、生食は控えましょう。

  • ⑤ 魚介類を生食するときは特によくかんで食べる

    万が一、生食した魚介類にアニサキスが付着していても、よくかんで食べれば(アニサキスも噛んでしまえば)死滅する可能性が高いといわれています。


アニサキスによる食中毒は、想像以上の激痛に襲われる厄介なものです。特に生で魚介類を食べる場合は、しっかりと対策し、アニサキスの体内侵入を防ぐことが大切です。もし気になる症状がある場合は、医療機関を受診し、正確な診断をしてもらうことをおすすめします。


(執筆 岡村信良/医療法人小田原博信会 理事長、医学博士-健康検定協会-)