【コンプレックスお便り2】


「こんにちは。24歳女性です。わたしのコンプレックスは、学歴が高いことです。こんなこと言うと怒られるかもしれませんが……。わたしは学歴が高いのに、学歴がなんの役にも立たないものづくり系の仕事をしています。すると周りの人から『なんでその学歴でこの仕事に?』などと聞かれて、煩わしい思いをします。仲間にも馴染めていないような気もするし……。いっそ学歴が低ければよかったのにと思うんです」


学歴で悩んでいる人はだいたい「自分よりも高い学歴を持つ人に対してコンプレックスを抱く」のだと思っていたから、「学歴が高いこと」がコンプレックスになることもあるらしい、というのはこの年になって、いやこの連載で初めて知った。「女で学歴が高いとモテない」といった一昔前に聞いたような理由かと思ったら「職を選ぶ上で、学歴相応の仕事に就かないと居心地が悪い気がして嫌」ときた。たしかに居心地は悪いんだろう。いちいち学歴に驚かれたりするのだって面倒だろうし、「そんな大学まで出てなぜ」とか言われたら自分の選択に自信を持てなくなるのも想像できる。


こうなってくると、何が人のコンプレックスとなるのかわからなくなるし、いっそバカバカしくも思えてくる。


ちなみにわたしには姉へのコンプレックスはあったが(https://mycarat.jp/articles/3)学歴コンプレックスはない。姉と同じ大学(それはたまたまだったけれど)に行こうとして一生懸命勉強したけど、わたしは第一志望の大学に落ちた。第二志望にも落ちた。けれど、清々しかった。頑張ったけどダメだったと思ったら、大いに泣けて、そして大いに受け止められた。


サボった夜も力を出し切れなかった試験もあったけれど、時間を巻き戻してももうあれ以上頑張れないと思えたから後悔はなかったし、自分が頑張ってきた時間をむしろ正しく評価してもらえた気がして「わたしが行くべき大学はここだったのね」とすんなり馴染んだ。落ちた日から数日だけ泣いて、その後は一度も「早稲田に行きたかった」とわめいたことはない。


一方、友人は第一志望に落ちたことが悔しくて諦めきれずに仮面浪人をしていた。自分が満足するところまでやって、それでも合格しなかったけれど「もう、いいんだ」と笑っていた。その笑いに自虐は含まれていなくて、どちらかというとさっぱりとした顔つきだった。頑張り抜いた人の顔。


そのまた一方では「俺、本当は慶應に行きたかった」と卒業まで言い続けた友人も居た。だんだんと彼は「慶應とか行ってるヤツってなんであんな偉そうなの?」と言いだし、学歴の高い人を見下すようになった(https://mycarat.jp/articles/39)。


結局、自分への納得感がないままに生きていることが、コンプレックスに大きく影響するんだな、と思う。


納得している人は、どんな職についていても、どんな学校に行っていても、どんな暮らしをしていても、満たされている顔つきをしている。なにをするかは大して重要じゃなくて、ケアすべきは自分の選択肢への納得感だろう。


“納得できない”なら納得できるまで動くしかない。


ごまかさず、向き合ってみる。行動してみて、自分と世界の立ち位置を正しく理解することからはじめなければならない。


やれることは全部やってみてから後悔しやがれ、と思う。



でもそもそも「ちょっと問題だな」と思っているのは「所属している場所が自分自身を表す」と思っている人が多いことだ。


そういう人に「あなたってどんな人?」ときくと「所属している会社・団体・学校名」を答えたり「育ち」を答えたりする。率直に「それって“あなた”じゃなくない?」と思う。


どんな家に生まれてどんな学校へすすんでどんな会社に入ったか、どのくらい財産を持っていてどんなものを持っていてどんな服を着ているかは、あなた自身の性格に関わっているかもしれないけれど、イコールあなたではない。「僕っすか?ん〜広告代理店の人間っす」とか言われると、幾分きょとんとしてしまうほどである。


わかりやすいからという理由でそのような自己紹介をしているぶんには構わないが、それがあたかも自分自身であるように開口一番「慶應に通ってます」と微笑むのは「ヴィトンを持ってます」と自己紹介しているのと変わらない。「おいおい、そんなやつは他にもいるんだぜ」と言いたい。


もちろんその会社に入れたその人のスキルや、その大学に入れた努力自体は褒めてしかるべきものだけれど、それならその「スキル」や「努力」、「経緯」を自分自身として紹介するのが適しているはずだ。「広告が好きで、広告代理店で働いています」ならわかる。「憧れの女優さんがすごくヴィトンの似合う素敵な女性で。彼女みたいになりたくて持ってるんです」ならわかる。


大学一年の頃合コンで「どこの大学?」とか「どこが第一志望だった?」とか「将来なんの仕事につきたいの?」とかばっかり聞かれていた時、「そんなことはいいから昨日みた映画の感想でも聞いてくれよ」と思っていた(もちろん会話の糸口としての自己紹介や、自分の職業アピールは良いんだけれど……)。


どうにも何かの輝きに寄りかかってついでに輝こうとする人が多い。自分の足で立って光れよ。となぜか半ばキレ気味にもなる。



「わたしはわたし、他人は他人」と切り離して捉えることができずに学歴コンプレックスを抱え続けているようなら今からでも納得するまで動いてみようというのがわたしの回答で、もしも過去のことを今でも悔いているのであれば身にまとっているものは「自分自身ではない」と理解してほしい。


まとっているものは、きみ自身とはなんら関係のないものだよ。きみの魅力はそれで決まるわけではないから、大丈夫。



(ライター/さえり 編集/サカイエヒタ)


⇒連載「彼女の「嫌い」なところ」をもっと読む