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腕がしびれて動かせない……。原因と対処法

2018.01.03

腕がしびれて動かせない……。原因と対処法


腕のしびれを経験したことはありませんか?たとえば「寝ているときに体重がかかっていたから」であればすぐに治るかもしれません。でも、特に心当たりがない、またなかなか治らない場合は不安になってしまいますよね。何らかの疾患の可能性はあるのでしょうか?今回は「腕のしびれ」の原因や対処法について解説します。

取材協力・監修



村田三奈子 先生


整形外科医。東京女子医科大学卒業後、東京女子医科大学東医療センター 整形外科、Harvard Univ. Massachusetts General Hospital, Dept. Orthopaedic Surgery、東京女子医科大学 非常勤講師、聖マリアンナ医科大学 非常勤講師を経て、2014年に医療法人東和会『M’s クリニック』開設。女医+(じょいぷらす)所属。


▼詳細プロフィール

https://mycarat.jp/experts/157

■そもそも「しびれ」とは?

「しびれ」というのは一過性の神経障害のことで、麻痺(まひ)に分類されます。皆さん、長時間正座をしていて足がしびれた経験がありますよね。あのしびれは、正座することにより足が圧迫され、血流が滞り、足の末梢(まっしょう)神経が異常事態だという信号を脳に伝えることで起こります。脳はこの信号を「しびれ」と認識し、全身に「足がしびれた」と発信します。これが、足のしびれの仕組みです。

「腕のしびれ」も同じような仕組みで発生することが多いです。たとえば、長時間パソコンの画面と向き合っている人は頭が前のめりになるような姿勢を取りがちなため、首の後ろの筋肉に負担をかけてしまいます。そのため、筋肉が硬直して血行を悪くし、神経が圧迫されて腕がしびれたり、痛んだりすることがあります。



しびれは日常的に起こりやすい症状のため、あまり気にしない人も多いかと思いますが、甘く考えるのは禁物。病院に行かなければならないほど重症化してしまう可能性がある「しびれ」の主な原因を見ていきましょう。

■腕のしびれを引き起こす原因って?

●胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)

鎖骨の周辺で神経や血管が圧迫されることによりしびれが起こります。首の筋肉、鎖骨、肋骨など、どこで圧迫が起きているかによって細かく分けられ、これらをまとめて胸郭出口症候群と呼びます。


症状は、腕や手の指のしびれ、首や肩の痛みなどです。また、動脈が圧迫されていれば腕や指が白くなり、静脈が圧迫されれば青紫色に変色します。症状が進行すると、腕を上げる動作が困難になります。


●ハネムーン症候群

恋人同士や夫婦で一緒に眠るとき、腕枕をすることがありますよね。腕枕をした後、腕全体がしびれていたという経験があるのではないでしょうか。これが「ハネムーン症候群」、正式名を「橈骨神経麻痺(とうこつしんけいまひ)」といいます。


橈骨神経というのは、腕の付け根から指先まで伸びている神経です。橈骨神経麻痺は、長時間この神経を圧迫することによって発症します。ひとりで眠る場合も、自分の頭を腕に乗せたりソファの背もたれを抱えるようにしたりしている人は要注意。不自然な体勢で腕を圧迫していると、発症の危険ありです。


橈骨神経麻痺では腕がしびれるだけではなく、手首の筋力や握力が落ちるといった症状も見られます。手首の筋力が落ちると、手首を上げるのが困難になります。


●絞扼(こうやく)性神経障害

脊髄から枝分かれした末梢神経が圧迫されると、そこから先の神経が阻害され、痛み、筋力低下、知覚異常などを引き起こしてしまいます。これが絞扼性神経障害です。


末梢神経は、神経の通り道が急カーブになっている関節の近くや、筋肉、靱帯などの間を通るときに圧迫されることがあります。絞扼性神経障害の全体の約80%が腕の疾患で、その中でも一番多いのは、手首にある手関節の正中神経が圧迫されて引き起こされる手根管(しゅこんかん)症候群です。そのほかにも、肘部管症候群や大腿外側皮神経炎、足根管症候群などがあります。


しびれや痛みだけでなく、感覚過敏や脱力感、筋力の低下なども症状として挙げられます。


●頸椎疾患

【変形性頚椎症】

頸椎疾患は、加齢変化によって引き起こされることが多い疾患です。


そのひとつである「変形性頚椎症」は、頸部痛や肩こり、背部痛などを引き起こします。椎間板という背骨同士をつなぐクッションの役割を果たしている部位が、加齢によって水分の保持能力が低下してしまうことで、押しつぶされ、椎骨や頸椎全体の形状が変化します。これが変形性頚椎症です。


変形により脊髄が圧迫されると「頸椎症性脊髄症」、神経根が圧迫されると「頸椎症性神経根症」と呼ばれます。


【頸椎椎間板ヘルニア】

椎間板ヘルニアは、椎間板の中の髄核が飛び出し、神経根を圧迫してしまうことで起こります。腕だけではなく、首、肩、手までもがしびれ、痛みや運動障害を引き起こします。咳やくしゃみをしたときや、力んだりしたときに「首が痛む」という症状も見られます。


しびれは、感じ方や表現方法に個人差が大きく、一概に原因を定めることはできません。症状がある場合は、より客観的な評価ができるよう、「しびれが出る部位」、「原因」、「タイミング」、「時間」などをメモしておくといいでしょう。


我慢ができてしまうためついつい放置しがちですが、治療やリハビリに長い時間がかかるような病気の可能性もあるので、「握力低下の自覚」がある場合、また「ボタンが留めにくい」、「お箸が持ちにくい」といった巧緻(こうち)障害が出た場合は、できるだけ早く受診してくださいね。


病院では、医師から握力低下や巧緻障害のほかにも、「首または上肢を動かすことによる症状の悪化」、「肩こりなどの付随症状」、「筋力低下」、「知覚障害」、または「運動障害」があるかを確認します。


治療法には、薬物療法のほかに、ブロック注射、理学療法、手術療法などさまざまなものがありますので、医師とよく相談して治療を進めましょう。

■腕のしびれを予防するには?

しびれをともなう疾患は、日常生活で局所に過度な負担がかからない姿勢を心掛けることで防ぐことができます。長時間同じ姿勢だったり、荷物をいつも利き手で持ったりしている人は、こまめに姿勢や持ち手を変えるようにしてください。


もし、腕のしびれを感じる場合は、局部をあたためて血行をよくしたり、軽いストレッチをしたりするといいでしょう。ただし、上記のような「握力低下の自覚」や「巧緻障害」がある場合は、なるべく早く専門医に相談することをおすすめします。



腕のしびれは加齢変化によるものが多いため、高齢になるほど症状は出現しやすくなります。ただし、なかには「脳神経障害」によってしびれを感じることもあるため、くれぐれも無理はせず、違和感があったら病院を受診するようにしてくださいね。


(藤野晶@dcp)