乳房が張る、痛い、しこりがあるなどで婦人科の診察を受けた場合、「乳腺症」と診断されることがあります。「特に治療は必要ない」とされることがほとんどですから、なんとなくもやっとしたことがあるという人もいらっしゃるかもしれませんね。「乳腺症」とは、いったいどんな病気なのでしょうか?

記事監修



加藤智子 先生


産婦人科医。浜松医科大学医学部医学科卒業、社会医療法人財団新和会八千代病院勤務。女医+(じょいぷらす)所属。


▼詳細プロフィール

https://mycarat.jp/experts/111

■乳腺症とは?

「乳腺」とは、母乳を作り分泌するための臓器です。この一部で、周囲に比べて硬く固まった「しこり」ができることがありますが、乳がんや乳腺炎のように病名がはっきりしていない疾患を「乳腺症」と呼びます。なお、乳腺症のしこりは良性のもので、治療の対象にはならないのが一般的です。


30歳以上の女性に発症することが多く、しこりができ、痛みを伴います。性ホルモンの不均衡によるもので、生理の周期に応じて痛みや大きさも変化します。乳腺症のしこりは輪郭がはっきりしておらず、平べったい形をしています。指で挟むようにすれば確認できますが、指の腹で押すような触り方では分かりません。


乳腺症は月経異常、不妊、妊娠中絶の経験者、出産回数が少ない、授乳異常があったというような女性に発症しやすい病気です。個人差がありますが、30-40歳で発症するという人が多くなっています。そして、閉経後には乳腺が退縮するので、一般的には乳腺症の症状も弱くなります。


また、似たような胸のしこりで「乳腺線維腺腫」というものがありますが、こちらは若い女性に見られることが多い病気です。しこりの輪郭がはっきりしていること、しこりが柔らかく、触っても痛みを感じることは少ないなど、乳腺症とは症状も異なります。

■乳腺症と乳がんの関係

乳腺症と乳がんのしこりは特徴が似ていることや、乳がんで切除した乳腺に乳腺症の症状が見られることが多かったという理由から、以前は「乳腺症を放置すると乳がんになるのではないか」と考えられていたこともありました。しかし現在の医学ではそうした考えは否定されており、乳腺症のしこりががん化することはないとされています。


しかし、「乳腺症」と「乳がんを発見する」というのは別の話です。乳腺症かと思って放置していたために、後から発症した乳がんに気が付かないというのはあってはならないこと。乳腺症と診断された人も、定期的な乳がんの検診は受けたほうが良いでしょう。

■乳腺症の治療法

乳腺症と診断された場合、定期的な診断を受けて経過を観察するのが一般的です。決して放置するということではありませんが、慌てて何か処置をすることもないでしょう。ただし、痛みが強い場合には鎮痛剤やホルモン療法で対処することもあります。



乳腺症では先ほども説明したように、発見即手術ということはありません。しこりがあるといっても良性のものなので、定期的な検診で様子を見ることになるでしょう。とはいえ、将来乳がんを発症する可能性はありますので、検査はしっかり受けましょう。


(藤野晶@dcp)