人間は、悲しいときなどに涙を流します。ストレス解消の一環として「泣ける映画を見る」なんて人もいらっしゃるかもしれませんね。ところで、「人が涙を流す」のはいったいどんなメカニズムによるものなのでしょうか。ストレス解消につながるのはどうして?今回は「涙」が出る理由について解説します。

記事監修



後藤聡 先生


眼科医。東京慈恵会医科大学医学部卒業、東京慈恵会医科大学大学付属病院にて勤務。医師+(いしぷらす)所属。専門は眼科疾患の中でもナミダ目の治療。特に直径1㎜の極小内視鏡を用いた低侵襲手術の発展と開発を行っている。

■涙が出る理由って?

涙の下水にあたる涙道がつまって常に涙が出る(涙道閉塞症)病気もありますが、そのほかいろいろな状況で目から涙が出てきます。日常生活では、悲しいとき、うれしいとき、感動したとき、あくびをしたとき、目に埃(ほこり)が入ったとき、タマネギを切っているときなどですね。涙が出る理由は、大きく分けると以下のふたつです。

●目を保護するための涙

涙は、普段何もない状態でも自然に出ています。これは「基礎分泌」といって、目を乾燥や細菌から守るために分泌される涙です。また、涙にはタンパク質や油分が含まれており、これらを目の表面に供給しています。


あくびをしたときにも涙が出ますが、これは涙嚢(るいのう)という目の横にある部位があくびによって周囲から圧迫され、涙嚢にたまっていた涙があふれるのが原因です。以下で説明する「反射性分泌」「情動性分泌」とは関係なく、基礎分泌の一種といえます。

●直接的・間接的な刺激が原因の涙

埃、タマネギの催涙成分などが直接的な刺激になり、涙が出ることがあります。これは皆さんも実際に経験があるでしょう。このような刺激に対する反射で出る涙を「反射性分泌」または「刺激性分泌」といいます。


また、心身への大きなストレスが間接的な刺激となり、涙が出ることもあります。悲しいとき、うれしいとき、大笑いしたとき、激しく怒ったとき、感極まったときなどに涙が出ますね。「喜び」の感情や笑うことにはポジティブな印象がありますが、医学的には「悲しみ」などと同じ「ストレス」なのです。


このような感情の高ぶりによって涙が流れることを「情動性分泌」と呼ぶこともあります。「反射性分泌」の一種とする説、別に分けるとする説と、諸説あります。しかし、いずれにしろ、このように感情によって涙を流すのは人間だけだといわれています。


この「情動性分泌」は、詳細はよくわかっていませんが自律神経に関係しているといわれています。悲しいときに涙が出るのは、副交感神経が作用しているためで、逆に怒りや悔しさが原因の涙は交感神経の働きによるものとされています。


「情動性分泌」が起きる理由については実験がしにくいためまだ分かっていませんが、人間は泣いて涙を流すことによって、ストレスを解消していると考えられています。タマネギを切ったときに出た涙と感情が高ぶって出た涙の成分を比較したところ、感情が高ぶったときの涙のほうがホルモンなどの特殊なタンパク質の含有量が多かったという報告があります。そのため「ストレスの原因となる物質を排出している」あるいは「ストレスを解消する物質を分泌している」といった仮説があるのです。



「基礎分泌」による涙はほかの動物でも見られますが、感情の高ぶりによって涙を流すのは人間だけです。涙が出るのは感性が豊かだからとも考えられます。涙もろいことは恥ずかしいことではありませんので、大いに泣き、そして笑いましょう。


(藤野晶@dcp)