冬に流行する感染症としては、インフルエンザやノロウイルスによるものがよく知られています。予防接種を受けたり、マスクを使用するなどして対策している人は多いでしょう。しかし、冬に流行する感染症はこれだけではありません。今回は、冬に気をつけたい感染症についてご紹介します。

記事監修



岡村信良医師


医療法人小田原博信会 理事長、医学博士-健康検定協会-

■冬に感染症が流行するのはどうして?

感染症とは、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体が増殖し、発熱、下痢、咳などの症状をもたらす病気です。冬は気温が下がり空気も乾燥しますが、これはウイルスにとっては活動しやすい環境なのです。


一方、人間の体は寒さによって体が冷えると免疫力が低下します。また、寒いとあまり水分を取らなくなるので、体内の水分量も不足気味になります。すると、鼻や喉が十分に保湿できなくなり、粘膜も傷めやすくなります。このようにいくつもの条件が重なり、冬は感染症にかかりやすくなるのです。


冬になるとインフルエンザノロウイルスによる感染症以外にも、以下のような感染症の流行が見られます。

●俗に「風邪」と呼ばれる病気の総称「かぜ症候群」

一般的に「風邪」と呼ばれている、鼻腔(びくう)から喉頭までの上気道という部位に急性の炎症を起こす病気で、医学的には「かぜ症候群」といいます。


主な症状は、頭痛、鼻水、鼻詰まり、喉の痛み、咳、くしゃみ、発熱などです。こういった「風邪」の特徴的な症状が現れるため、異なる病原体による感染症でも「かぜ症候群」と呼ばれます。かぜ症候群の中には、インフルエンザウイルスやマイコプラズマなどが原因となる場合も含まれます。


「かぜ症候群」には特効薬がなく、治療は対症療法で行われます。予防としては、外から帰った際のうがい、手洗いが大切です。

●子供がかかりやすい「RSウイルス感染症」

「RSウイルス感染症」は、2歳までにほぼ100%の人がかかるともいわれる感染症です。一度かかっても再感染があるウイルスで、2回目からはそれほど重い症状にはならないことが分かっています。


症状は主に呼吸器系に現れます。「ぜーぜー」と音のするような呼吸になったり、ひどい咳が出たりするほか、鼻水、鼻詰まり、発熱などが見られます。小さい子供ほど症状が重い傾向があり、「肺炎」や「細気管支炎」へと重症化する場合もあります。


RSウイルス感染症では、対症療法による治療を行います。水分、栄養を十分に補給し、安静にして、経過を見ます。諸症状は1週間ほどで治まる場合が多く、完治までは2週間ほどかかることもあります。ただし、ウイルスの排出期間は7-21日とも4週間ともいわれており、症状が治まった後でも他人に感染することがあるので注意しましょう。



乳幼児以外では症状が軽い人も多く、流行しやすい病気だといわれています。また、感染力も非常に強く、予防も難しいとされています。10-2月ごろには特に流行しやすい時期なので、まだ感染したことがない乳幼児には注意が必要です。「ただの風邪」と思っているような人から感染することもあるので、家族に風邪をひいている人がいたら寝室を分けるなどの対策をしましょう。

●乳児に多く見られる胃腸炎「ロタウイルス感染症」

「ロタウイルス感染症」は、ロタウイルスによる感染性胃腸炎です。生後6カ月-2歳くらいまでの乳幼児がかかりやすい感染症といわれています。


主な症状は、嘔吐(おうと)や下痢で、米のとぎ汁のような白っぽい便が出ます。また、嘔吐や下痢によって脱水症状も起こしやすくなります。それ以外に、意識がもうろうとしたり、発熱を伴ったりする場合もあります。


ロタウイルス感染症の症状のうち、嘔吐は1-2日、下痢は5-7日ほどでほぼ治まります。また、発熱は発症時のみに見られる症状で、半日-1日ほどで治まります。


ロタウイルスは非常に感染力が強いウイルスですが、一度感染すると体内に抗体ができ、重症化することは少なくなります。子供が主な感染源になりますので、感染した子供の便や嘔吐物の処理には注意が必要です。


ただし、体力のある成人の場合には感染しても発症しないこともありますし、発症しても症状は軽く済む場合が多いといわれています。ただし、体内にはウイルスがあり、便などにも潜伏しています。二次感染には気を付けましょう。

●「かぜ症候群」と似た症状の「溶連菌感染症」

「溶連菌」と呼ばれる細菌による感染症です。溶連菌は正式には「溶血性連鎖球菌」と呼ばれ、大きくα溶血、β溶血の2種類に分けられます。溶連菌感染症をもたらすのはβ溶血のうちのA群、B群、C群、G群などとされており、A群による感染が全体の90%以上です。つまり、溶連菌感染症の原因のほとんどは「A群溶血性連鎖球菌」なのです。


溶連菌感染症の症状は、「かぜ症候群」に似ています。初期の症状として、38-39度の発熱、喉の痛み、嘔吐などがあり、その後、手足や体に痒みを伴う発疹が現れたり、舌にブツブツが出たりします。熱が下がった後には、手足の皮膚がむけることもあります。



溶連菌感染症の治療には、抗生物質を投与します。抗生物質は細菌の細胞を攻撃する働きがあり、ウイルスには効果がありませんが、溶連菌には効果を発揮します。完治するには7日-2週間ほど抗生物質を飲み続け、溶連菌を完全に退治しなければなりません。症状が治まったからといって自己判断で服用を中止せず、医師の指示に従いましょう。


溶連菌感染症を予防するワクチンなどはありません。予防には一般的なかぜ症候群などと同じく、うがい、手洗いの徹底が有効です。また、飛沫(ひまつ)感染を予防するためには、マスクの着用も効果があります。

●咳が長く続くのが特徴の「マイコプラズマ感染症」

マイコプラズマという細菌の一種である病原体による感染症で、「かぜ症候群」のうちのひとつでもあります。また、「マイコプラズマ肺炎」とも呼ばれています。


マイコプラズマの大きさは細菌とウイルスの中間くらいで、細菌として分類されていますが細胞壁を持っていません。このため、抗生物質の種類によっては効果がありません(近年は、これまで有効とされてきたマクロライド系の抗生物質が効かないマイコプラズマが登場し、肺炎を引き起こしたりしています)。


マイコプラズマ感染症の症状は、38度以上の発熱、長く続く激しい咳(ただし痰は伴わない)です。そのほかにも頭痛や全身の倦怠(けんたい)感、鼻水なども見られ、一般的なかぜ症候群によく似ています。中耳炎、無菌性髄膜炎、肝炎などの合併症につながることもありますので、子供の場合は小児科、それ以外は内科を受診して、病気を特定することが大切です。


マイコプラズマ感染症は、熱が下がった後も咳が2-4週間ほど続きます。発症してから完治までは、約4週間かかるといわれています。


マイコプラズマの感染力はそれほど強いものではありませんが、潜伏期間が1-2週間あり、発症中も感染させるため、ウイルスが体内に侵入してから1カ月以上は他人に感染する可能性があるということです。マイコプラズマにはワクチンがないので、うがい、手洗いの徹底、感染者との接触を避けることが予防法となります。


ウイルス、細菌による感染症を防ぐには、うがい、手洗いを徹底するのが効果的です。特に、人が大勢いる場所に出掛けたときには忘れないようにしましょう。自分が感染してしまった際は外出を控えるか、やむを得ない場合はマスクを着用すると良いでしょう。


(藤野晶@dcp)