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人前に立つと緊張する…。「あがり症」について医師に聞いてみた。

2017.04.25

人前に立つと緊張する…。「あがり症」について医師に聞いてみた。


人前に出ると誰でも緊張するものですが、それが極端になってしまい、ひどく発汗したり、震えたりといった症状が出る人がいます。このような場合、いわゆる「あがり症」と呼ばれます。この「あがり症」の原因とその治療について『横山クリニック』の横山尚洋院長にお話を伺いました。横山先生は40年の経験を持つベテランドクターです。

取材協力・監修


横山尚洋院長


1977年、慶應義塾大学医学部卒業。日本精神神経学会精神科専門医。精神保健法指定医。大学病院、精神科病院、総合病院精神科勤務をへて1999年に『精神科・心療内科 横山クリニック』を開設。


⇒『精神科・心療内科 横山クリニック』公式サイト

http://y-clinic.com/

■そもそも「あがり症」とは?

まず「あがり症」とは何なのかを横山先生に伺ったところ、医学的には「あがり症とは、社交不安障害(Social Anxiety Disorder:SADと略されます)とされている」そうです。


では、その「社交不安障害」が何かといいますと、

「他人に見られている場面で、非常に強い不安と恐れを感じ、自分が否定されているのではないかと過度に心配し、社交場面を避ける精神疾患である」


(兵庫医科大学・山田恒『臨床のあゆみ No.101』(田辺三菱製薬)P.15より引用)

とされています。


症状は過度な精神的な緊張が特徴で、パニックに近い状態になることもあります。動悸(どうき)や震えなどが生じ、発汗を伴うこともあります。人前では誰でもあがってしまうものですが、それが過度の域に達してしまうのですね。顔が赤くなっていることに周囲の人が気付いてしまうのではと心配し、さらに緊張が強くなるのです。


さらに問題となるのは、人前で緊張してしまうのが嫌になってそれが深刻になり、外へ出ることができなくなる、また学校・職場に行けなくなるなどして社会生活に障害が起こる点です。ひとりで思い悩み、部屋に引きこもってしまうという状態に陥る場合もあるようです。

■「あがり症」の原因とは?

あがり症の原因は、性格的なものと考えられがちであったとのこと。そのため日本ではなかなか「疾患・病気」であるという認知が一般的にならないという面があるそうです。


疾患・病気という認識があれば「治療しよう」となるかもしれませんが、自分だけでずっと悩んでしまうという人もいらっしゃって、心の問題はなかなか一様にはいきません。


横山先生によれば「あがり症は日本人には昔から多いといわれています。女性の方が多いといわれたりしますが、心療内科などを受診するのは男性の方も少なくはありません。性差はあまりないでしょうか」とのことです。


※日本における社交不安障害(SAD)の男女比率は、女性が男性の1.5-2.2倍というデータがあります。出典:川上憲一『こころの健康についての疫学調査に関する研究』総合研究報告書,2007;pl-21.


横山先生は「あがり症の人は、繊細で真面目な人が多いですね。ナーバスで傷つきやすいという面がある人といっていいかもしれません」と指摘していらっしゃいます。

■「あがり症」への処方箋

あがり症の治療について横山先生に伺いました。


――あがり症の治療にはどのような方法がありますか?


横山先生 「あがり症」のタイプによっても異なるのですが、一般に「あがり症」といわれるものには大きく分けて、

  • 緊張が持続するタイプ:全般型

  • 特定の場面で緊張するタイプ:場面限局型

の2タイプがあります。ずっと緊張してしまうタイプでは対人面全般に対する治療が必要になりますし、特定の場面で緊張する「場面限局型」では、そのときの緊張をどのように和らげるのかに着目いたします。


――なるほど。具体的にはどのような治療なのでしょうか?


横山先生 治療法は大きくふたつあって、

  • 心理療法

  • 薬物療法

になります。心理療法はカウンセリングによる治療ですが、認知行動療法的なものが一般に用いられています。なぜ不安や恐怖を感じるのかを知るとともに症状をコントロールして立ち向かっていくやり方を学ぶ治療です。


――どちらを選ぶかは何か基準があるのでしょうか?


横山先生 それは患者さんの希望に沿うようにします。たとえば「どうしても薬は嫌だ」と患者さんがおっしゃるのであれば、投薬はせずに心理療法を試みます。しかし両者は対立するものではなく平行して行っていくことが一般的です。


――薬物療法ではどのような薬が使われますか?


横山先生 大きく分けて3つありますね。

  • マイナートランキライザー:緊張・不安を取る薬

  • ベータブロッカー:動悸・震えを抑えるための薬

  • SSRI・SNRI:抗うつ剤

※SSRIは「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」で脳内のセロトニン濃度を高める働きをします。SNRIは「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」で、脳内のセロトニン濃度、またノルアドレナリン濃度を高める働きをします。

「マイナートランキライザー」「ベータブロッカー」は「場面限局型」の患者さんに効きやすい薬です。「SSRI」「SNRI」は頓服薬(とんぷくやく:症状が出たときに飲む薬)ではないので、症状が持続する全般型のタイプの患者さんに処方して緊張症状を改善するために使われるのが一般的です。


――あがり症治療で注意するポイントは?


横山先生 一番大事なのは、社会生活に障害とならないように、たとえば部屋に引きこもってしまうといったことにならないようにすることですね。緊張してしまう場面を回避することは大事なのですが、回避ばかりしていることは問題になります。チャレンジして克服できるようになることですね。緊張を和らげる治療を行うことにより少しずつ苦手な場面を克服していくことが重要なポイントです。


――ありがとうございました。



日本人には「あがり症」の人が多い、とのことですが、これはやはり勤勉で真面目な性格の人が多いためではないでしょうか。上記のとおり、女性のほうが多いという統計データもあります。女性読者の皆さんの中にも「私はあがり症では?」と悩んでいる人がいらっしゃるかもしれません。


横山先生によれば「自分で悩んでいるのなら専門医に足を運んでみるのが良いでしょう」とのこと。ひとりで思い悩まず、相談してみるのはいかがでしょうか。



(高橋モータース@dcp)