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どうしたら防げる?子供の食物アレルギーについて

2018.02.26

どうしたら防げる?子供の食物アレルギーについて


何らかのアレルギーを持つ人が増加しており、特に乳幼児のアレルギー問題は深刻です。卵・小麦・牛乳などの食物アレルギーがあると、親御さんの苦労も大変なものになります。アレルギーについては世界中で研究が進められていますが、その治療について徐々に新たな事実が明らかになってきました。

記事監修

武井智昭 先生


2002年、慶応義塾大学医学部卒業。同大学病院付属病院を経て、2017年よりなごみクリニック院長就任。

医師+(いしぷらす)所属。


▼詳細プロフィール

https://mycarat.jp/experts/216

「ある年齢まで特定の食物を摂取しない」 は効果なし!

小児の食物アレルギーが増えていく中、子供たちを守るために何をすればいいのか、世界中の医師・親が考えてきました。


2000年、アメリカの小児科学会の方針は、

・妊娠中、授乳中の母親はアレルギー食品を避けること

・乳製品を与えるのは1歳以降、卵は2歳、ナッツや魚は3歳以降


というものでした。しかし、このような方針に従っても食物アレルギーを持つ小児が減ることはありませんでした。この方針に確かな証拠はなかったのです。


そのため2008年には、

・妊娠中、授乳中、離乳食でアレルギー食品を避けてもアレルギー予防に効果があるという科学的根拠はない


と米国小児科学会が発表するに至りました。


現在では、3歳までアレルギー食品を避けることはアレルギー予防にならないばかりか、むしろ逆効果になると考えられています。

世界に衝撃を与えたギデオン・ラック博士の実験

2015年2月、米ヒューストンで開催されたアメリカアレルギー学会において、ロンドン大学のギデオン・ラック博士の研究論文が発表され、世界に衝撃を与えました。


博士の実験は以下のようなものでした。

●実験対象

生後6カ月から11カ月の赤ちゃん600名以上

(親や兄弟にピーナッツアレルギーの発症者がいる)


●実験内容

上記の赤ちゃんを以下の2つのグループに分ける


・第1グループ

医師の指導の下、週3回以上一定量のピーナッツを食べ続ける


・第2グループ

ピーナッツを徹底的に避け続ける


●実験結果

5歳になった時点で、ピーナッツアレルギーの発症率を比較


・第1グループ

ピーナッツアレルギー発症率:3.2%


・第2グループ

ピーナッツアレルギー発症率:17.3%

つまり、「ピーナッツを早い時期から少量ずつでも食べた赤ちゃんのほうが、ピーナッツアレルギーを発症しにくい」のです。また「ピーナッツを徹底的に避けてもピーナッツアレルギーになることがある」のです。


※すでにピーナッツアレルギーを発症している人が、ピーナッツを食べることは危険です。アナフィラキシーショックを起こし、呼吸困難や死亡する危険性があります。ピーナッツを食べることで誰もがピーナッツアレルギーを予防できるという話ではありません! 注意してください。

どうすれば食物アレルギーを防げるか!?

なぜ、上記のような結果になるのでしょうか? これには、人間の免疫システムの仕組みが関与しています。


そもそもアレルギー反応とは、免疫システムの過剰反応です。体内に侵入してきた異物を認知して排除するために起こります。


しかし、不思議だとは思いませんか? たとえばピーナッツアレルギーの場合、なぜピーナッツは駄目で「オレンジ」は大丈夫なのでしょう? なぜ、同じ食物なのに異物と判断して攻撃されるものと、攻撃されないものがあるのでしょうか?


これには「Tレグ」という細胞が関わっていることが分かってきました。

「Tレグ」細胞が司令官・T細胞を止める!

体内に異物が侵入すると、免疫システムが働き、司令官である「T細胞」が実働部隊(マクロファージ・キラーT細胞・B細胞)に指令を出すことで、異物を攻撃、撃退します。


しかし、その異物が体に害をなすものではないときには、それを司令官・T細胞に知らせるヤツがいるのです。これが「Tレグ」細胞です。


人間の体はとてもよくできていますが、いつも正確なわけではなく、攻撃部隊の司令官・T細胞も時には間違った判断をしてしまうのです。


それを止めるのが「Tレグ」細胞です。「それは攻撃しなくていいですよ」と、司令官・T細胞を止め、また司令官・T細胞と実働部隊の間に割って入るのです。


つまり、「Tレグ」細胞はT細胞とせめぎ合って免疫システムの過剰反応を防ぐ役割をしているというわけです。


離乳期のころに摂取した食べ物については、成長とともに食べ慣れてきて「これは大丈夫」と「Tレグ」細胞が増えていくため、その物質については免疫システムの過剰反応が起こらないのだ、と考えられています。


たとえば離乳期に卵を食べると、体内に「卵Tレグ」細胞がつくられ、T細胞が卵への攻撃指令を出すのを「卵Tレグ」細胞が止めるのです。同様に「小麦Tレグ」「米Tレグ」など、専門のTレグ細胞が私たちの体内にあり、そのおかげで小麦や米を食べても免疫シシテムが攻撃しない、アレルギーが起こらない、というわけです。



「妊娠中、授乳中の母親はアレルギー食品を避けること」「乳製品を与えるのは1歳以降、卵は2歳、ナッツや魚は3歳以降」といったかつての常識は、全く意味がない、むしろ逆効果なことがあると、現在では否定されています。


「Tレグ」細胞の発見によって、アレルギー、自己免疫疾患の治療に光が見えてきました。医療の力によって、アレルギーに悩まされる小児、親御さんたちが減ることが期待されています。


(高橋モータース@dcp)