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「遺伝だからしょうがない」は逃げ!?コンプレックスと遺伝の関係

2017.05.03

「遺伝だからしょうがない」は逃げ!?コンプレックスと遺伝の関係



「私の目は二重でお父さん似、でも輪郭は丸くてお母さん似。この丸顔、コンプレックスだけど遺伝だからな~~」



こんなふうに、両親の体の特徴が半分ずつコピーされていくことを遺伝といいます。体の特徴のすべての情報を蓄積しているのが「DNA(=遺伝子)」です。お父さんやお母さんも、そのお父さんやお母さんのDNAを半分ずつコピーし、遺伝して生まれてきます。



「娘は旦那に似るっていうから、輪郭がシュッとした旦那さんを見つけなくっちゃ!」



…はたして本当なのでしょうか?



今回は山野医療専門学校副校長の中原英臣先生に、遺伝について伺ってみました。


(山野医療専門学校へお伺いしました)

取材協力・監修

中原英臣先生


山野医療専門学校副校長/ 新渡戸文化短期大学名誉学長/ 医学博士

慈英大卒業後、1977年から79年までワシントン大学にてバイオ研究に従事、山梨医大助教授を経て、現職。ニューヨーク科学アカデミー会員のほか、研究とは別に医療制度のさまざまな問題点を幅広く指摘、医療ジャーナリズム的仕事も意欲的に行う。

■「遺伝子」、「DNA」とは?

DNAってどこにあるの?


体は60兆個の細胞からできています。その全ての細胞の中に、同じDNAが含まれているのです。



細胞の中を覗いてみると、中心には核とよばれる球体があります。この中でDNAはタンパク質に巻かれ、染色体となって存在しているのです。


染色体は、2本組になっているものが22本、1本組のものが2本、合わせて46本あります。このうち1本組の2本は性染色体といい、性別を決める重要な染色体です。


指先の細胞の中にも、つま先の細胞の中にも、鼻の頭の細胞の中にも、同じ遺伝情報を持つDNAが入っているなんて、なんだか不思議ですよね。でも元々ひとつの受精卵から60兆個に分裂していった、と考えれば納得できるでしょう。



●性別の遺伝は?


でも父親と娘、母親と息子は、性別が違うのに体の特徴が似ていたりしますよね。その理由は、体の特徴と性別を遺伝させる細胞が別物だからです。


わたしたちの体をつくる細胞は2種類あります。


皮膚や内臓、骨などの体をつくる細胞は『体細胞』といい、46本の染色体を持っており、2本組で23対あります。


一方、『生殖細胞(精子や卵子のこと)』は減数分裂という特殊な分裂方法をしており、体細胞の半分である23本しか染色体を持たないのです!両親それぞれからこの23本の染色体を受け継ぎ受精卵になるのですが、このときの組み合わせによって胎児の性別が決まります。


■遺伝するのはどんな特徴か?

●ということは…


ここまででおわかりの方もいるでしょうが、特徴と性別は全く違う染色体によって遺伝しています。つまり、「娘はお父さんに似る」などといったウワサは本当ではないようでした…。



●劣性遺伝と優性遺伝について


特徴の遺伝と性別の遺伝の違いがわかったところで、劣性遺伝・優性遺伝について知っておきましょう。両親それぞれの23本が組み合わされ46本の染色体を持つ受精卵ができるとき、それぞれがどの位置にどの部位を形づくるかの遺伝情報を持っています。そのため、胎児にどちらの特徴を現すかは、受精の際にジャッジされるというわけ。


優性遺伝の特徴は、両親のうちどちらか片方からそのDNAを受け継いだ場合にあらわれ、劣勢遺伝の特徴は、両親からそろってそのDNAを受け継いだ場合、あらわれます。



●この形質は優勢?劣勢?

  • 目の色:黒や茶色は優性遺伝、灰色や青は劣性遺伝

  • まぶた:二重は優性遺伝、一重は劣性遺伝

  • 耳あか:ウェットは優性遺伝、ドライは劣性遺伝

  • 舌:巻き舌ができるのが優性遺伝、出来ないのが劣性遺伝

つまり、自分が一重でも、旦那さんが二重であれば、将来できる子供は二重である可能性が高いということ。しかし、両親の生殖細胞が組み合わされる際、一部で組み換えが起こることもしばしば。完全に、とは言い切れないのが、人類の神秘でもあります。

■これは遺伝によるものなの?


・酒の強さ/弱さ⇒○

お酒を飲んだとき人間は、アルコールを①アセトアルデヒドに分解し、②そのアセトアルデヒドを酢酸へと分解するはたらきをします。①を行うADHという酵素や②を行うALDHという酵素のはたらきが強いか弱いかは、両親から遺伝します。


・肥満体質/やせ体質⇒○

アドレナリンからの刺激を、B3受容体という部分がキャッチすることでカロリーが燃焼されていくのですが、B3受容体の設計図を持った肥満遺伝子が正常にはたらかないことで、なかなかカロリーが消費されない、という自体が発生していることがあります。この肥満遺伝子は子供にも遺伝するといわれているため、もし気になるようなら生活習慣への配慮が必要でしょう。


・長生き/早死に⇒○

サーチュインという遺伝子が原因。すべての人が持っている遺伝子ではありますが、これが活動している家系には長生きが多いのです!(ちなみにこのサーチュインが活性化すると、性には淡白になるそうです。)


・知能が高い/低い⇒△

完全に解明されているわけではありませんが、知能は環境だけでなく遺伝によっても決まるであろうといわれています。記憶しようとすると脳内でグルタミン酸が発生するのですが、これを受け取るグルタミン酸受容体の機能の良し悪しは遺伝子構造によって決まっています。


一卵性双生児のIQテストはほぼ同得点だったのに対し、二卵性双生児では差がでたとのこと。同じDNAを持つ双子の点が一緒なのはわかりますが、違ったDNAを持つ双子の点に差があったということは、なんらかの遺伝子がIQに影響を及ぼしているということです!


・性格⇒△

性格には心のアクセルとも言える「ドーパミン」や逆に心にブレーキをかける「セロトニン」など数多くの脳内物質の分泌が大きく関わっています。環境の要因が大きいともいえますが、これらの脳内物質を取り込むはたらきをする遺伝子にはタイプがあり、遺伝によって受け継がれやすいのです。


具体的には「新奇性探求(好奇心に基づいて探索する)」「損害回避(危険を避けようとする)」「報酬依存(社会や周囲に適合しようとする)」「持続性(熱心に続け、固執しようとする)」の4つの性格傾向が遺伝しやすいそう。



ちなみにドーパミンとセロトニンを取り込むはたらきをする遺伝子型の組み合わせを参考にすると、日本人の性格は以下の4つに大別されるといえます。

  • 慎重・新奇性型

  • 慎重・じみち型

  • 楽観・新奇性型

  • 楽観・じみち型


DNAの検査はとても身近なものになってきています。自分で思っていた性格とは違う結果に、驚くこともあるかもしれません!

■遺伝は未知だらけ

自分がコンプレックスに思っている部分が劣勢遺伝子による特徴でも、将来できる子供も同じ特徴を持つのか、と言われれば、そうではありません。劣勢遺伝子が目立ってしまうこともあるかもしれませんが、パートナーの遺伝子の型と組み合わせによって優性遺伝子の特徴を持って生まれることもあります。誰も自分の子供の特徴なんて予想できないでしょう。それに、環境や努力次第で、遺伝子に打ち勝つことだってできるかもしれませんよ。



~中原先生からのメッセージ~



大切なのは、人は遺伝からできた特徴が全てではない、ということ。肥満遺伝子を持っていたとしても、生活習慣に気をつければ誰だって体重を落とすことができるはずです。ほら、女性ならばメイクのテクニックであんなにもキレイになれるじゃない!遺伝だから…と執着しなくても、いろんなテクニックを使って「賢く」美人になりましょう!


(取材・文 マス山)

参考文献


・中原英臣・佐川峻(2013)『人の性格はDNAで決まっている』講談社+α新書

・野田利樹(2011)『知らないと損する遺伝のヒミツ』中原英臣監修,洋泉社

・中原英臣(2000)『DNA・遺伝子の不思議にせまる本』成美堂出版

・久我勝利(1998)『「そこが知りたい!遺伝子とDNA』中原英臣監修,かんき出版社

・中原英臣・佐川峻(1997)『DNAがおもしろい(ビジネスマン知的雑学塾)』日本能率協会マネジメントセンター