「花粉症」は非常に嫌なものですが、不思議なことに誰もが発症するわけではありません。また、それまで平気だったのに突然発症することもあります。なぜ花粉症は「突然なってしまう」ことがあるのでしょうか?今回は花粉症の発症の仕組みについてご紹介します。
記事監修
稲葉岳也 先生
耳鼻咽喉科医。医学博士。東京慈恵会医科大学卒業後、2004年に、いなばクリニックを開業。医師+(いしぷらす)所属。
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■花粉症は「アレルギー反応」のひとつ
人間の体内に異物が侵入し、体に害をなすものと判断されると、それを排除するために免疫システムが働きます。
花粉症の場合には、花粉が異物です。体内に侵入すると、それに対抗する(異物を体外に排出する)ための「抗体」が作られる物質のことを「抗原」といいますが、花粉は抗原になります。
この「抗原の侵入 ⇒ 抗体が作られる」ことこそ人間の免疫システムの肝なのですが、これが花粉症を引き起こすのです。花粉症の症状は次のようなステップを経て現れます。
1.花粉(抗原)が体内に侵入する
2.リンパ球(B細胞)が「抗体」(IgE抗体)を作る
3.IgE抗体が放出され、肥満細胞※1がこれを身にまとう(抗体が周囲に付いてイガ栗のようになります)
4.再度、花粉が侵入
5.花粉が肥満細胞のIgE抗体に接触し、ヒスタミンが放出される
※1肥満細胞は「マスト細胞」とも呼ばれます。肥満と関係があるわけではなく、膨れた様子からこの名前があります。
ヒスタミンは、毛細血管を拡張し、血液の成分を外に染み出させます。これが炎症を引き起こすもとになります。また、ヒスタミンは知覚神経を刺激してくしゃみ・痒(かゆ)みを起こし、それが自律神経を刺激して分泌腺から鼻水を出させます。
くしゃみや鼻水は体内に侵入した花粉を外へ排出するために起こるのですが、いわば良かれと思って起こされている免疫反応が「不快なもの」になってしまうわけです。
■「突然」花粉症になるのはどうして?
では、なぜ突然花粉症になってしまうのでしょうか? その発生の仕組みはいまだ解明中ですが、現在では、
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花粉が体に害をなす異物と判断されると、免疫システムは「再び花粉が侵入したときの準備」を行う
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その準備は、花粉を攻撃するための「B細胞」「肥満細胞」を増やすこと
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花粉が体内に侵入するたびに「B細胞」「肥満細胞」が増えていき、それがあるレべルを超えたときに、花粉症になる
と考えられています。よくあるのは「コップに少しずつ水がたまるように……」といったたとえで、花粉を攻撃するための準備がたまりにたまって、あるときコップから水がこぼれるように花粉症が発症するというイメージです。
ですので、子供のときは平気だったのに大人になってから花粉症になってしまった、という人もいらっしゃるわけです。
一方で、全く花粉症にならないという人もいらっしゃいます。この場合は2通りの可能性が考えられます。
1.この先花粉症になる可能性がある
2.「Tレグ細胞」の働きによって花粉を害のないものとして体が認識している
2の場合には、花粉が体内に侵入しても免疫システムが攻撃をしません。そのため上記のようなアレルギー反応を起こすことがないのです。
春先は花粉症の季節です。すでに花粉症を発症している人は花粉を徹底的に避け、また薬を服用するなどしてアレルギー反応が起こらないようにしなければなりません。現在花粉症でない人も、いつ発症するかは分かりませんから、花粉との接触を避けるよう注意しておいたほうが良いかもしれませんね。
(高橋モータース@dcp)