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どれくらいリスクがあるの?無痛分娩のメカニズムとは?

2018.03.30

どれくらいリスクがあるの?無痛分娩のメカニズムとは?


最近では出産時の痛みを軽減させる「無痛分娩」という方法が注目されています。悪いニュースを見かけることもあるため、「あまりいいイメージがない」という方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし諸外国では、日本に比べると無痛分娩の割合が圧倒的に高いといいます。今回はこの「無痛分娩」について解説します。

記事監修



坂口健一郎先生


産婦人科専門医。日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。防衛医科大学校卒業後、防衛医大病院で研修ののち、多数の病院で勤務。内視鏡手術に特化したクリニックの院長を経て現在、不妊症専門のクリニックで勤務中。

■産痛はなぜ起こるの?

出産に関して引き起こされる痛みのことを、総じて「産痛」と呼びます。産痛は、赤ちゃんが子宮から出てくる分娩(ぶんべん)第一期に起こる痛みと、赤ちゃんが産道を進む分娩第二期に起こる痛みがあり、主に腰や下腹部、また膣口と肛門をつなぐ会陰(えいん)部に痛みが生じます。


この産痛は、胎児の大きさ、骨盤の形、産道の柔らかさなど複数の要素によって異なります。また痛みの感じ方自体も人によってかなり差があるため、人によって痛い、痛くなかったという差が生じるのです。

■無痛分娩の仕組みは?

無痛分娩は「麻酔を使うことで、出産時の強烈な産痛を抑える」という分娩方法で、完全に痛みとるわけではありません。ただ、分娩時の痛みが和らぐため分娩がスムーズに進みやすくなります。また、母体側の疲労が少ないため、出産後の回復が比較的早いというメリットもあります。無痛分娩で用いられる鎮痛法は、主に以下の2種類です。


1.硬膜外麻酔

脊髄を通っている神経の近くに麻酔を施す鎮痛法です。非常に強い鎮痛作用があるものの、麻酔薬による母体・胎児への影響が少なく、出産時に意識がはっきりしているのが特徴。ただし、脊髄の神経に病気がある場合などは、硬膜外鎮痛による無痛分娩を行うことはできません。また低血圧やかゆみなど、麻酔による副作用があります。


2.点滴による麻酔

麻酔薬の点滴による鎮痛法です。鎮痛作用が緩やかなのが特徴で、「和痛分娩」(痛みをなくすのではなく和らげる)とも呼ばれています。硬膜外鎮痛に比べると処置が簡単なため、用いるクリニックが多いのも特徴です。麻酔薬が効いている間は、母体・胎児ともに眠くなったり、呼吸が弱くなるという副作用が見られます。


ただし、帝王切開で分娩された経験のある方は、原則、無痛分娩を実施できません。分娩中に子宮破裂(前回の手術創が裂けてしまうこと)を起こしても、痛みが緩和されているので発見が遅れる可能性があるためです。

■無痛分娩のリスクって?

硬膜外麻酔の副作用や不具合としては、たとえば麻酔用の管で硬膜が傷ついて起こる「硬膜穿刺後頭痛」や、麻酔薬が血管に入ることで起こる「局所麻酔薬中毒」があります。ほかにも、麻酔薬が硬膜の奥にあるくも膜下腔へ入ることで起こる「全脊髄くも膜下麻酔」などが挙げられます。このうち、局所麻酔薬中毒と全脊髄くも膜下麻酔は、呼吸困難や意識不明に陥ることがあります。


また麻酔が効きすぎると、陣痛に合わせてうまく息むことができなかったり、足に力がはいらなかったりするため、分娩時間が延長する「遷延分娩」となる可能性もあります。遷延分娩は母体側が疲労し危険なので、器械分娩や吸引分娩または帝王切開という方法をとることも。


「無痛分娩の処置を受けた女性が死亡した」というニュースが報じられることがありますが、2015年に兵庫県で起きた事故や2017年1月に大阪で起きた死亡事故は、誤って硬膜外腔より奥の部分に麻酔をしてしまったことで呼吸困難になり、その後の処置を怠ったことで起きたものです。まれではありますが、「事故の心配が全くないものではない」ということは知っておくべきですね。


無痛分娩を検討する際は「麻酔を実施している施設にふたり以上医師が勤務しているか」、「医師は麻酔の経験が100例以上あるか」など、救急時に素早く対応できる体制があるかを確認しておく必要があるでしょう。



「出産時の痛みが怖い」という人にとっては、無痛分娩は非常に魅力的です。しかし安易に選択するのではなく、事前にどういったものなのか、リスクの部分までしっかりと理解することが大事といえるでしょう。


(中田ボンベ@dcp)