「なかなか寝付けない」「朝までに何度も目が覚める」など、睡眠に関する悩みを抱えている人は多いもの。眠れない日が続けば疲労が蓄積されるので、早めに改善するに越したことはありません。十分に身体を休ませるためには、薬に頼るのもひとつの手ですね。今回は薬剤師としてご活躍の三上彰貴子さんに、睡眠薬使用時の注意点や、依存にならないコツについて教えてもらいました。
取材協力・監修
三上彰貴子さん
薬剤師・衛生検査技師。外資系製薬株式会社勤務後、MBA取得。その後、コンサルティングファームにて、主に医療分野を手掛ける。2005年に独立後は、コンサルティングやマーケティング、講師などの活動をおこなうように。また、薬剤師の資格を活かして、各種媒体で薬に関する情報を解説している。
就寝前4時間のカフェインは厳禁 ノンカフェインのあたたかいお茶でゆっくりリラックスして眠気を促して
―睡眠薬の使用を検討する前に、なにか自分でできることはありますか?
三上さん:
「寝付けない」「眠りが浅い」などの症状が一時的なものであれば、ひとまずは生活習慣を見直すことをおすすめします。具体的には、適度な運動で身体を動かしたり、寝具や照明にこだわって、心地よく眠れる空間を整えたりすることも大切です。
また、夜中にトイレに起きるのを防ぐため、就寝前の水分摂取は控えめにして、就寝3~4時間前くらいからはコーヒーや緑茶、チョコレート、カフェイン入り炭酸は摂取しないようにしましょう。就寝時にお腹がすいていて寝付けないときは、油ものは避けて軽く炭水化物をとるのがおすすめです。ちなみに、寝る前にお酒を飲むと、寝付きはよくなるように感じますが、睡眠が浅くなるので逆効果です。
夕食後は、ゆっくりと湯船に浸かってリラックスしたり、ノンカフェインのあたたかいお茶を飲んでゆったりした時間を過ごしたりするといいですね。テレビやスマホ、PCなど強い光の刺激があるものは寝る1時間前くらいからは避けて、ほどよい眠気を感じたところでベッドに向かいましょう。まったく眠気を感じていない状態でベッドにいると、「寝なければいけない場所なのに眠れない!」とストレスを感じてしまうことも。「ベッド=心地よく眠る場所」と脳に認識させるためにも、眠くなってからベッドに入るようにできるといいですね。
「転勤や引っ越しによって生活環境が変わった」「悩みや不安を抱えてイライラしている」などの要因があり、これらの実践だけでは効果が感じられないなら、実践と並行して市販の睡眠改善薬を使うのも一手です。
それでもなお効果が感じられず、慢性的な睡眠不足で精神的にも不安定になったり日常生活が困難になったりしたら、早めに受診しましょう。睡眠外来が近くになければ一般的な内科でも診察可能ですし、「悩みが大きくて精神的に参っている」「気力がない」などの自覚症状もあるなら、心療内科(メンタルクリニック)を受診するのもおすすめです。
睡眠薬服用後の運転は危険! すぐに眠れる環境での服用必至
―睡眠薬服用時の注意点を教えてください。
三上さん:
服用タイミングは就寝30分前ぐらいにして、すぐに眠れる環境で飲むことが大切です。服用したら、運転や危険な機械操作、危ない作業には携わらないようにしてください。また、お酒と一緒に飲むのは絶対NG! 眠気が強く出て非常に危険な状態になります。さらに、カフェインを飲むとせっかくの睡眠作用が低減する可能性があります。
人によっては、飲み続けていると効果を実感しにくくなることもあるかと思います。そんなときは、受診時に現状を医師にしっかりと伝えて、薬の量や種類の変更を検討してもらいましょう。薬がなくても眠れそうなときには、飲まないで寝ても大丈夫です。ただし、薬が不要になったからといって人にあげるのは絶対にだめ。一人ひとりの症状に合わせて処方されているものなので、トラブルのもととなることがあります。
―薬に依存してしまうことはありませんか?
三上さん:
薬によっては依存するものもありますが、「飲まないと眠れない」と思い込んで精神的に依存してしまう可能性はあります。そうならないよう、「薬に頼ればいいや」と安心するのではなく、自然な睡眠を促せるように昼間に軽い運動をして、夜遅くまでスマホやTVなどを見ないよう心掛けましょう。睡眠薬なしでも眠れる環境作りを工夫して、少しずつでも改善していけるといいですね。
副作用が出たらすぐに医師にご相談を!
―睡眠薬には副作用はありますか?
三上さん:
あります。過度の眠気に襲われることがあるほか、ふらつき、めまい、健忘(就寝前のことを忘れてしまう)、薬によっては悪夢を見ることもあります。強い副作用が出た場合などは、医師に相談するようにしてください。
―ありがとうございました。
良質な睡眠は健康の源。睡眠不足によって身体を壊す前に、自分に合った改善方法、改善薬を見付けて、毎日を快適に過ごしてくださいね。
(取材・文 松本玲子)