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貧血や腫瘍の検査になる。血液検査における「血球系」の項目

2018.04.09

貧血や腫瘍の検査になる。血液検査における「血球系」の項目


血液の成分は主に赤血球・白血球・血小板・血漿(けっしょう)タンパクの4つに分類されます。血液検査ではこれらの成分それぞれを検査し、血液自体に異常がないかをチェックします。この血球系の項目の数値によって、「貧血」や「腫瘍」といった病気の発見にもつながるのです。今回は血液検査における「血球系」の項目を解説します。

記事監修


笹倉渉 先生


麻酔科標榜医、麻酔科認定医、麻酔科専門医、日本医師会認定産業医。『公立昭和病院』初期臨床研修医。『東京慈恵会医科大学附属病院』麻酔科・助教。『公益社団法人 北部地区医師会 北部地区医師会病院』麻酔科・科長を経て、現『MYメディカルクリニック』院長。


⇒『MYメディカルクリニック』公式サイト

http://mymc.jp/

■血球系の検査項目でわかること

血液検査の主な「血球系検査」の項目は以下のようなものです。


※基準値は検体調査会社、医療機関などによって異なることがあります。


●赤血球数(RBC)

【基準値】男性460-570万/μL

【基準値】女性380-500万/μL

血液1μL中の赤血球の数を計測します。赤血球は、酸素を運び込んで二酸化炭素を運び出す役割を果たします。そのため、赤血球の数が少ないと「貧血」状態になります。逆に数が過剰になると「多血症」で、血流が悪くなってしまうのです。


●白血球数(WBC)

【基準値】3,300-9,000/μL

体の免疫系で重要な役割を果たす白血球の量を測定します。白血球数が多い場合には、現在体のどこかで白血球が戦っている可能性があります。ですので、腫瘍・炎症などが疑われます。白血球数が少ない場合には、再生不良性貧血、ウィルス感染症、薬物アレルギーなどが疑われます。


●ヘモグロビン量(HGB)

【基準値】男性13.5-17.5g/dL

【基準値】女性11.5-15.0g/dL

血液1dL中のヘモグロビンの量を計測します。ヘモグロビンは赤血球中にあって、鉄とタンパク質が結び付いたものです。体の隅々まで酸素を運び、代わりに二酸化炭素を受け取る仕事をします。


そのため、この量が少ないと貧血状態になりやすく、数値が低い場合には「鉄欠乏性貧血」などが疑われます 。



●ヘマトクリット(Ht)

【基準値】男性39.7-52.4%

【基準値】女性34.8-45.0%

「ヘマトクリット」とは、一定量の血液に占める赤血球の割合のことです。基準値にあるとおり、男性では「血液の4-5割は赤血球」、女性では「血液の3.5-4.5割は赤血球」。女性のほうが赤血球の割合が小さいですから、この点からも女性のほうが貧血になりやすいことが分かります。


ヘマトクリットの値が小さい場合には「鉄欠乏性貧血」「悪性貧血」「再生不良性貧血」などが疑われます。また「白血病」や「がんの転移による貧血」といった重篤な病気が関与している場合もあります。


ヘマトクリットの値が大きい場合には「多血症」「脱水症」などが疑われます。ただし、生理前の女性でこの値が大きくなることがありますが、その場合は特に病気ではないので心配ありません。


●平均赤血球容積(MCV)

【基準値】85-102fL

赤血球一つの平均的な大きさ(容積)を計測します。単位の「fL」は「フェムトリットル」のことです。この赤血球の大きさは、上記のヘマトクリットと赤血球数から計算することができます。


※フェムトは10のマイナス15乗。


●平均赤血球色素量(MCH)

【基準値】28.0-34.0pg

それぞれの赤血球に含まれるヘモグロビンの量を計測します。単位の「pg」は「ピコグラム」です。ヘモグロビンの量が少ないと貧血状態になります。


●平均赤血球色素濃度(MCHC)

【基準値】30.2-35.1%

一定量の血液中で、赤血球の容積に対してヘモグロビン量がどのくらいあるのかを割合で示します。

MCV・MCH・MCHCの数値は、いずれも貧血に関係していますので、特に女性は注目してください。たとえばMCVでは以下のような判断がされます。


・MCVの数値が低い場合

鉄欠乏性貧血、炎症に伴う貧血が疑われます。


・MCVの数値が高い場合

ビタミンB12欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血などが疑われます。また過剰な飲酒によって数値が高くなることがあります。



●血小板数(PLT )

【基準値】14.0-34.0 万個/μL

血液1μL中の血小板の数を計測します。血小板は出血の際に、血液を凝固させ、損傷箇所をふさぐ仕事をします。血小板が少ないと血が固まりにくくなってしまいます。血小板数の値では以下のような判断がされます。


・10万個/μL

血小板減少症と診断されます。血が止まりにくくなります。


・40万個/μL

血小板増多症と診断されます。


実は血小板は、過剰に数が多くなっても血を止める機能が低下します。また血小板については、くっつく力(これを凝集能力といいます)が重要なポイントになります。この力が過剰に高まると「血栓」がつくられて、血管を詰まらせることがあるのです。血小板の極端な増減には注意しなければなりません。


●網状赤血球数(レチクロ)

【基準値】4-19%

「網状赤血球」とは、成熟する一歩手前の赤血球(2日以内に成熟した赤血球になる)で、ニューメチレンブルーという色素で染めると、網目状の柄が見えることからこのような名前が付いています。網状赤血球が赤血球に対してどのくらいの割合を占めるのかを計測します。


赤血球は骨髄でつくられます。網状赤血球の値が基準値よりも大きいことは、造血が盛んに行われていることを意味します。逆に値が小さい場合には造血機能が低下しているわけで、再生不良性貧血などが疑われます。また急性白血病などの重篤な病気でも骨髄の機能が低下し、この数値が低いことがあります。


●「白血球像」

人間の免疫システムで重要な役割を果たしている「白血球」ですが、一口に白血球といっても、以下の5種類があります。


・好中球

・リンパ球

・単球

・好酸球

・好塩基球


この5つを「白血球分画」といい、それぞれ役割・形状・性質が異なっています。また、正常時にはそれぞれの占める割合が一定になっていますが、外部から病原体の侵入があったり、体内環境に異常が生じたりすると、その比率も変化します。


血液検査では、主にその比率に注目して「白血球像」あるいは「白血球分画」を調べるための項目があります。主なものは以下のとおりです。



●白血球像 好中球(Neutrophil)/略称「neut」など

【基準値】40.0-75.0%

好中球の割合を計測します。白血球の半分以上がこの好中球。好中球は体内に入った異物のところへ移動しこれを攻撃します。


●白血球像 リンパ球(Lymphocytes)/略称「LYMPH」など

【基準値】18.0-49.0%

リンパ球の割合を計測します。リンパ球は骨髄でつくられますが、体内に侵入した抗原に対抗する働きをします(Tリンパ球は異物を攻撃、Bリンパ球は抗体をつくり出すことに関わります)。


●白血球像 単球(Monocyte)/略称「mono」など

【基準値】2.0-10.0%

単球の割合を計測します。単球は、好中球と同じく異物を攻撃するほか、古くなった血球を分解する、異物の情報をリンパ球に伝達するという仕事をします。


●白血球像 好酸球(Eosinophil)/略称「eosino」など

【基準値】0.0-8.0%

好酸球の割合を計測します。好酸球は、好中球と同じような働きをしますが、寄生虫への攻撃も行います。


●白血球像 好塩基球(Basophils)/略称「baso」など

【基準値】0.0-2.0%

好塩基球の割合を計測します。好塩基球は、アレルギー反応に関わり、ヘパリン、ヒスタミンを含みます。


●白血球像 異型リンパ球(Atypical lymphocytes)/略称「A-lymph」など

【基準値】0.0%

異型リンパ球の割合を計測します。異型リンパ球とは、体内に侵入した抗原に反応して変形したリンパ球です。


●出血時間検査

血液自体の働きの中でも「止血」機能は重要です。血管が破れて、血液がいつまでも流出するようでは命に関わりますからね。そのため、血液がきちんと凝固するかをチェックするのです。


出血が感知されると、肝臓で「プロトロンビン」(血液凝固因子の第2因子)という物質がつくられ、血液に流れ込みます。



血液中の血小板が破れた箇所に集まり、血栓をつくって止めます。このときに血液凝固因子(血液を固める働きをするタンパク質)のひとつ※である「フィブリノーゲン」が「フィブリン」という物質に変化して網目状に重なり、「のり」のような働きをします。


プロトロンビンはほかの血液凝固因子によって「トロンビン」に変化。トロンビンが、フィブリノーゲンをフィブリンに変える働きをします。


このような仕組みを前提に、止血に関しては「フィブリノーゲン」「プロトロンビン」「トロンボプラスチン」といった物質に着目してチェックする検査項目があります。


※血液の凝固には、12種類の血液凝固因子と呼ばれる物質が働くことが分かっています。


●フィブリノーゲン(FIB)

【基準値】155-415mg/dL

血液中のフィブリノーゲンの量を計測します。フィブリノーゲンは、上記のように血液を凝固させるために重要な役割をしますので、この値が大きい場合には、急性感染症、腫瘍などが疑われます。また、フィブリノーゲンは肝臓でしかつくられないため、この値が小さい場合には、肝障害などが疑われます。


●プロトロンビン(PT)

【基準値】凝固時間:9.4-12.5秒

【基準値】プロトロンビン比:0.9-1.1

【基準値】プロトロンビン活性:70-100%

【基準値】PT-INR:0.85-1.15

血液凝固因子の一つである「プロトロンビン」についての検査項目です。このプロトロンビンはトロンボプラスチンという物質を加えると固まる性質があります。これを利用して、

・固まるまでの時間(秒)

・プロトロンビン比(検体凝固時間/対照凝固時間)

・活性値(%)

といった項目を測定します。


●活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)

【基準値】25.0-36.0秒

血液を凝固させる能力の検査の一つです。血漿に部分トロンボプラスチンとカルシウムイオンを加えて、部分トロンボプラスチンを活性化させ、凝固するまでの時間を測ります。


肝臓に障害があると血液を凝固させる因子が減少し、血が固まるまでの時間が余計にかかってしまいます。この検査は、血友病のスクリーニングとして重要です。



月経があり、そこで大量の血を失う女性の場合、やはり「血液の健康」に注意しなくてはいけません。貧血状態に陥っていないか、今回ご紹介した項目をよく確認することをおすすめます。


(高橋モータース@dcp)