笑ったときに歯茎がむき出しになってしまう「ガミースマイル」。見た目の恥ずかしさから、口元が気になって思いっきり笑えない……なんて人も多いのだそうです。
その原因は一体何なのか? 治療法はどんなものがあるの? オーラルビューティクリニック白金の院長で、日本ガミースマイル研究会の代表も務める歯科医師の園延 昌志先生にお話を伺いました。
取材協力・監修
園延昌志 先生
新潟大学歯学部卒業。専門は義歯、歯周病、審美・インプラントなど。海外でのガミースマイル治療を学び、日本人に合った術式を考案し、多くのガミースマイル治療を手掛けている。2017年には書籍「パーフェクト・スマイル 審美歯科」(牧野出版)を出版。
▼オーラルビューティクリニック白金
■ガミースマイルは日本人に多い!?
――ガミースマイルは、生まれつきで悩む人が多いというイメージがあるのですが、その原因は何なのでしょうか?
園延先生
ガミースマイルは、骨格や歯の大きさなどに由来します。原因は大きく分けて3つ挙げられます。
1) 唇の位置が上がりすぎている
2) 歯の位置が下もしくは、前にいきすぎている
3) 歯が短すぎる、小さすぎる
多くの方は原因がひとつではなく、これらが複合的に見られます。診察では、どの原因が最も影響が大きいかを調べ、一番効果のある施術を提案します。
――ガミースマイルは日本人に多いと聞いたことがあるのですが、それは本当ですか?
園延先生
日本人に限らずアジア人全体に言える特徴なのですが、「上顎前屈(じょうがくぜんとつ)」、いわゆる出っ歯の方が多いんです。上顎の歯が出ていると、笑ったときに唇がめくれ上がりやすくなるんですよ。また、前歯が下がっていて、噛んだときに下の歯が見えないほどに噛み合わせが深くなってしまっている場合もガミースマイルになりやすいです。
――私の周りでも悩んでいるという話を聞いたことがあります。ガミースマイルの人は増えているんでしょうか?
園延先生
症例として増えているというデータはありませんが、気にする方は増えていると思います。インターネットで「笑う 歯茎」と検索すれば、すぐに「ガミースマイル」という言葉が出てきますからね。自身がガミースマイルであることに気付いて、治療に来られる方もいます。
■治療方法はどんなものがあるの? 費用や期間は?
――治療法はどういうものがありますか?
園延先生
当院で行うメインの治療は、歯冠長延長術(クラウンレングスニング)という歯を歯肉の外に出す手術です。歯の位置が前もしくは下側にいきすぎている場合や歯が短すぎる場合に行います。単なる歯肉切除と違い、歯冠長延長術では歯茎を切って歯茎の中の骨の整形も行います。歯肉切除だけだと肉が再生してしまうので、半年程度で元の状態に戻ってしまうのです。
――歯肉切除だけだと、正直意味がないということなんですね。
園延先生
短期的に治したいという方であれば良いのかもしれませんが、せっかく治療するのにそういう人はあまりいないですよね。当院にも「他の医院で歯肉切除をしたのにガミースマイルに戻ってしまった」と言って来られる方もいますよ。歯肉切除だけなら治療費が安価で、難しくない手術なので、先にそれだけ施してしまう人が多いのかなと思います。
――というと、歯冠長延長術は期間や費用もかなりかかるのでしょうか?
園延先生
1本だけやることはほとんどなく、6本〜8本など前歯全体に行うことが多い治療です。費用としてはおよそ30万円程度かかりますね。期間は、手術自体が90分で、一週間後の糸取りがあるだけです。手術後、すぐに効果は感じられますよ。
――唇の位置が上がりすぎている場合の治療法は何ですか?
園延先生
上唇粘膜切除術というもので、上唇を上がりにくくする手術があります。上唇の内側を短く切除するのですが、こちらも手術自体は90分程度で一週間後の糸取りで終わりです。費用は20万円前後です。
――いずれも、手術自体はすぐに終わるものなんですね。ほかにもありますか?
園延先生
歯の位置がかなり下にある人は、比較的症状がヘビーなので、歯冠長延長術と一緒にセラミック矯正を行うことがあります。歯茎をグッと上げて、セラミックを入れて歯の位置を矯正します。前歯全部にセラミックを施すことになるので、見た目がかなりキレイになりますよ。費用は、歯冠長延長術が30万円、セラミック矯正が90万円くらいなので、トータル120万円程度になります。
――症状に合わせて、さまざまな治し方があるのですね!
園延先生
他にもインプラント矯正やボトックス注射などもありますが、基本的には歯冠長延長術、上唇粘膜切除術、セラミック矯正の3つを主にしています。あとはそれらを組み合わせるか、そうでないか。費用やスケジュールなどによって治療法を提案しています。
■笑顔に自信が持てないならまずは相談を
――患者さんの男女比や年齢層を教えてください。
園延先生
病気ではなく審美障害なので、来院されるのはやはり女性の方が多いです。男性は歯茎が見えていても比較的気にしない方が多いのかもしれませんね。年齢層としては、幅広い年代の方がいらっしゃいますよ。例えば卒業や就職、結婚などのライフイベントのタイミングで治療に踏み切る方が多いです。
――面と向かって会話などをすると、歯はどうしても見えてしまいますし、人と話す機会が多い方は特に悩まれそうです。
そうですね。正直、笑ったときに歯茎が見えてしまうというのは、本人が気にならなければ全く問題ないことなんです。でもそれがコンプレックスになって、人前で素直に笑えないなんて残念ですよね。実際、治療を受けられた方は「もっと早くやればよかった」という方が大半です。治療に抵抗がある方もいると思いますが、たった一度の手術で、笑顔に自信を持つことができます。悩む必要はないということを知っていただきたいですね。
まだまだ知名度が高いとは言えない「ガミースマイル」。悩む人の中には「治療できると思っていなかった」という方も少なくないそうです。もしガミースマイルが原因で、笑顔に自信が持てないのならば、まずは一度専門医に相談してみてくださいね。
(取材・文:阿部 綾奈 編集:ノオト)